「投資」と「ギャンブル」のリスクはどれぐらい違うのか?

前回は、投資の実践が必要な理由などを説明しました。今回は、投資とギャンブルの違いについて見ていきます。

投資金額がゼロになる確率は非常に低い

日本で「投資」が敬遠されている背景には、「投資」によって大きく損失をこうむるのではないかという恐れも存在していると思います。

 

確かに「投資」にはリスクがつきものです。「ハイリスク・ハイリターン」といわれるように、大きな利益を狙えば狙うほど、そのリスクは大きくなります。しかし、リスクといってもいわゆるギャンブル(賭け事)ほどリスクは大きくありません。「投資」を怖がる人の中には、「投資」をギャンブルと同列のものと見なして、必要以上にリスクを過大に見ている人がいるのではないかと筆者は考えています。

 

そこで、まず、株式投資とギャンブルの違いをご説明しましょう。第一の違いは、その「投機性」です。ギャンブルというものは、ハイリスクでハイリターンです。勝てば短期間で元手が倍になる可能性もある代わりに、負けた場合は元手をすべて失ってしまいます。

 

しかし、株式投資においては、短期間で大儲けすることが少ない代わりに、投資金額がゼロになる確率も非常に低いものとなっています。つまり、10万円で馬券を買って外れたら10万円すべてを失ってしまいますが、10万円で株を買った場合、少なくとも長期投資を行えば5万円以上損をすることはめったにありません。3万円以上損をすることだって珍しいでしょう。

株式投資は「ゼロサムゲーム」でも「競争」でもない

第二の違いは、ゼロサムゲームであるか否かです。ギャンブルの場合は、勝つ人がいれば、必ず負ける人がいます。もし、競馬で全員が同じ馬に賭けた場合、賭けは成立せず、その馬が勝ってもお金は増えません。賭けに負けた人のお金を、勝った人がとるのがギャンブルというものです。このように、勝った人の利益と負けた人の損失が等しくなるようなゲームをゼロサム(足してゼロ)ゲームと呼びます。

 

宝くじも同じです。外れた人がくじを買うために出したお金を、当たった人が持っていくのです。ですから、負ける人が少なければ得られるお金は少なくなりますし、勝った人が多ければやはり一人当たりの分配金は少なくなります。さらに言えば、ギャンブルでは、その場を開いている胴元が必ずショバ代(場所代)をとっていきます。いわゆるテラ銭(手数料)です。例えば競馬においては、馬券の全売り上げの4分の1は主催者のものとされています。当たった人に払い戻される金額は、馬券売り上げの75%しかないのです。

 

宝くじの場合はもっとひどく、当選金額の総額は、発売総額の5割を超えてはならないとされています。売り上げの半分以上は販売元である全国都道府県および指定都市がとっていくわけです。宝くじの起源は、寺社などの修復費用を集めることであったらしいですから、発行元が得をするのは当然かもしれません。

 

それに比べて、株式はゼロサムゲームではありません。ある株について、発行時に比べて株価が上がっていれば、株式を持っている人のすべてに利益が出ます。逆に、発行時に比べて株価が下がっていれば、株式を持っている人のすべてに損失が出ます。株式が一見、ゼロサムゲームに見えるとしたら、勝つ人と負ける人の両方が同時に存在する状況もあるからです。例えば、株価が1000円のときに買った人は、その株の株価が900円になれば損失を抱えたことになりますが、株価が800円のときにその株を買っていた人は、株価が900円のときには利益を上げたことになります。

 

しかし、株価が史上最高値を記録すれば、その株を持っているすべての人が値上がり益を得ることができます。株式投資とは、勝つ人と負ける人とが等しく存在するようなゼロサムゲームではなく、他人との競争でもないのです。理論的には、株価が上昇した局面では、ゲームの参加者すべてが「勝っている」こともありますし、逆に下落局面ではすべての参加者が「負けている」ことだってありえます。株価が上昇することで、ゲームの参加者全員が「勝つ」というのは、勝者の陰に必ず敗者がいるギャンブルとは大きく異なります。株式投資とは、みんなが幸せになることのできるゲームなのです。

 

ちなみに、株式投資には胴元もいません。証券会社などが売買手数料を取りますが、それ以外にお金を抜きとっていく「主催者」は存在しないのです。その面でも、主催者が最も得をするギャンブルとはまったく仕組みが違うといっていいでしょう。

 

もちろん、株式投資とギャンブルとの間には共通点もあります。例えば、上がると思って買った株の価格が下がってしまえば、100万円の投資が一時的に95万円や90万円の価値になってしまうことがあります。その時点で売ってしまえば5万円、10万円を損したことになります。儲けようと思ったのに結果的には損をしたという意味では、宝くじやパチンコで負けるのと同じです。

株なら投資したお金が日本経済復活に役立つ

とはいえ、株式投資の場合は、宝くじやパチンコのようなギャンブルとはやはり大きな違いがあります。第三の違いは株価の上昇や下落は、ある程度の予測ができるという点です。

 

実際、福祉や再分配に熱心だった民主党から、経済再生に熱意を持つ自民党に政権交代したことで、日本経済が上向きになって株価が上昇するだろうと予想した人は大勢いました。その人たちがこぞって日本株に投資したために、実際に日経平均株価が上昇したのです。自分の予測を信じて、いち早く投資を行った人たちはかなりの利益を上げることができました。

 

それでも、やはり株式投資はギャンブルに似ていると考える人も少なくないことでしょう。実際、競馬や競輪に夢中になる人たちもまた、熱心に新聞を読み込んで、どの馬や選手が勝つかを「予測」しているからです。確かに、情報を集めて分析し勝つと思われるほうにお金を預けるという意味では、競馬や競輪などのギャンブルにも似たところがあります。

 

しかし、株式投資とギャンブルには、最も大きな第四の違いがあります。それは、社会的な意味です。ギャンブルは単なる遊び(ゲーム)ですが、株式投資とは、お金を必要としている人に対して、お金を貸し出すことなので、社会的にも大きな意味があるのです。

 

あなたがいくら賭け事にお金をつぎこんだところで、それはあなた個人の楽しみやお金儲けのためになるにすぎませんが、日本株や投資信託への投資の場合は、そのお金が直接的に日本経済の復活の役に立つことになります。2013年に多くの人が日本株を購入して、その結果として日経平均株価が上昇し、景気回復への期待が高まったことなどはその典型的な例といえるでしょう。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長

学習院大学経済学部卒業後、1985年に野村證券投資信託委託入社。日本株式運用、総合企画、秘書室勤務を経て野村アセット・マネジメント・シンガポール、野村ブラックロックで幅広い資産運用ビジネスを経験。その後、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズのディレクターを経て、2002年5月に投資信託本部長としてAIG 投信投資顧問(現 パインブリッジ・インベストメンツ)入社、その後、常務執行役員投資信託本部長を経て、2011年6月から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 執行役員 グ ローバル・マルチアセット運用部長

慶應義塾大学商学部卒業後、1987 年に三井生命保険入社。1993年より同社英国投資顧問現地法人に勤務し、ロンドン・シティからグローバルな株式・債券投資を行う。その後、スカンディア生命保険、三井住友海上シティインシュアランス生命保険を経て、2004年にAIG 投信投資顧問入社。その後、執行役員 運用本部長兼グローバル・バランス運用部長を経て、2013 年1 月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員およびCFA 協会認定証券アナリスト。

著者紹介

連載インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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