前回は、売れない不動産の代表格と、賢い不動産投資家の出口戦略を説明しました。今回は、老朽化した不動産の使用価値を取り戻す方法と、その必要性について見ていきます。

老朽化した物件は「解体して更地」にする

どのようにすれば、老朽化した不動産の使用価値を取り戻すことができるのでしょうか。

 

その答えは、老朽化した物件を解体して更地にすることです。老朽化した物件に人気がないのは、まずは見た目です。ぼろぼろの建物を見ると、不動産そのものがぼろぼろで無価値のように感じられてしまうのです。

 

価値がないのは上物(建物)であって、土地には価値があることは、少し考えれば誰にでもわかるのですが、建物がそのまま残っていると、その印象に引きずられて、不動産そのものに価値がないように見えてしまうのです。

 

冷静な人でも「建物を解体するには100万円以上の解体費がかかるな」と頭で計算をするので、古家付きの物件にはあまり手を出したがりません。物件価格以上に手間とコストがかかることが、最初から見えているからです。

 

しかし、建物を解体して「更地」にすると、その不動産に対するイメージががらりと変わります。見た目もすっきりしますし、以前のように既存建物の印象に引きずられることなく、土地をどのように使用しようかと考えられるようになるのです。

 

人間のイメージの力は馬鹿にできません。どんなに冷静な人でも、見た目の印象に無意識に影響されてしまうものです。「人は見た目が9割」などともいわれるように、美男美女や笑顔の素敵な人の好感度が高いことは、誰しも否定できないでしょう。

 

とはいえ、地主さんや不動産オーナーさんは、たとえ使用していない建物でも、解体して更地にすることをあまり好みません。

 

その理由はいくつか考えられます。

 

第一に、もったいない(MOTTAINAI)精神です。他人から見てどんなにぼろぼろの物件であっても、オーナーさんは「まだ使える」と思うものです。ご自分で使われるのであれば、たしかに「まだ使える」のかもしれませんが、商品としてお客様に提供するのであれば「まだ使える」なんてものではありません。

 

不動産屋をやっていると、しばしば、これをお客様に見せてもいいのだろうかというレベルの物件に出くわします。もったいないという気持ちはわかりますが、売却を考えるのであれば、最低限、商品としての体裁は整えるべきです。

 

第二に、解体して更地にしてしまうと、固定資産税が6倍になるので嫌だという地主さんも多いです。それはたしかにそのとおりです。

 

とはいえ、何のために解体するのかを考えてみてください。更地にしても、それですぐに売れるのであれば、固定資産税を払う必要はありません。むしろ、更地の6分の1とはいえ、何年間も売れないままに固定資産税を支払い続けるほうがバカバカしいというものです。

 

それに、2014年に「空き家対策特別措置法」が成立してからというもの、老朽化して使用に耐えない空き家は、実質的に家ではないということで、固定資産税の軽減措置が認められないことになりました。つまり、論理的にはすでに破綻しているのです。

 

第三に、解体費用を出すのが嫌だという地主さんもいらっしゃいます。たしかに小さい家でも何十万円、大きいアパートであれば百万円以上の解体費用がかかりますから、その出費を惜しむ気持ちもわからないではありません。

 

しかし、繰り返しになりますが、何年間も売れないまま固定資産税を支払い続けるくらいなら、更地にしてさっさと売却したほうが、長い目で見ればメリットが大きいでしょう。

 

特に、都心部の古くなった収益物件などは、収益物件としての価値よりも、更地の土地としての価値のほうが高いこともあります。地価の高い地域であれば、物件よりも土地そのものを欲しがる人のほうが多いのです。

古家付きのまま業者に売却すれば解体費の支払いがゼロ

ちなみに、どうしても自前で解体費を支払いたくないという方には、裏技として、古家付きのまま不動産業者に売却してしまうという手もあります。

 

不動産業者は、たいてい解体業者とコネがあるので、一般の人よりも安い費用で解体ができますし、古家のイメージに惑わされずに不動産の価値を判断できるので、適切な価格で買い取ってもらうこともできます。

 

もちろん、不動産業者も慈善事業ではありませんから、更地にして、その後に転売することで利益を上げるのですが、そこまでの手間をかけることはできないという方には、最適の解決方法でしょう。

 

なお、収益物件を解体して更地にする場合には、入居者と交渉して立ち退いてもらわなければなりません。このような交渉も時間がかかって大変ですし、家賃の何カ月分かにあたる立ち退き費用を支払わねばならないので、それが面倒だという方は、やはり不動産業者に売却してしまうのがよいかもしれません。

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