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連載緊急レポート「減速」中国経済の実態を探る【第2回】

巨大な経済体である中国の「地域別の動向」とは?

中国経済GDP不良債権新常態NWB(日本ウェルス銀行)

巨大な経済体である中国の「地域別の動向」とは?

財務省OBで、現在、日本ウェルス(香港)銀行独立取締役の金森俊樹氏が、「中国経済の実態」を探る本連載。まずは、巨大な経済体である中国の「地域別の動向」を詳しく見ていきたい。

産業構造変化の遅れと資源依存がリスク要因に

1.巨大な経済体は地域別の動向を見ることが不可欠
周知のように、中国は今や世界第2位の大きな経済体であり、最大規模の広東省のGDPだけでも、インドネシア1国を大きく上回る。このため、その実態を正確に把握するためには、地域毎の状況を見ることが有効かつ不可欠だ。地域毎の成長も2015年総じて減速はしているものの、その状況は一様ではない。差異は主として、産業構造変化の進捗度合、不動産市況、財政の不動産市場への依存度、地方政府債務の状況の違いから生じている。

 

地域毎の2015年の成長率を見ると(図表1 参照)、東北3省の遼寧(3%)、黒龍江(5.7%)、吉林(6.5%)と、山西(3.1%)の低迷が深刻だ。

 

【図表1 地域別債務状況と成長率】

(注1)1類債務限度額は2015年末。カッコ内は審計署が前回包括調査をした2013年6月からの増加率。
(注2)成長率は2015年。XXは全国成長率を下回っている地域
(出所)2016年1月28日付鳳凰財経、2月1日付中国房地産網
(注1)1類債務限度額は2015年末。カッコ内は審計署が前回包括調査をした2013年6月からの増加率。
(注2)成長率は2015年。赤字は全国成長率を下回っている地域
(出所)2016年1月28日付鳳凰財経、2月1日付中国房地産網

 

主たる要因として、以下の3点が指摘されている。

 

①重工業中心で市場の需給変化に対応できていないこと

②経済に対する発想や経済基盤が計画経済時代の慣性を引きずっていること

③国有大企業に多くの中小企業が依存し、いったん大企業が不振に陥ると、経済全体に影響が及ぶこと

参照:遼寧省政府諮問委員、2015年8月24日付中国経済周刊

 

①は市場要因、②は体制要因、③が構造要因と整理することができよう。

 

2014年成長率が全国最低、15年も遼寧に次いで低い成長率となった山西は、石炭(煤)に過度に依存する“一煤独大”経済と呼ばれており、石炭産業の発展とともに省経済が発展してきたが、石炭需要減少→在庫増加→価格低下の循環で、1昨年から石炭産業の赤字が続いている。昨年10月には、省政府が、省内の61の採算の悪い石炭採掘を閉鎖する予定であることも明らかにしたと伝えられている(2015年11月3日付South China Morning Post)。

 

黒龍江は大慶油田、全国最低で23年ぶりの低成長となった遼寧は鉄鋼への依存が強く、やはり資源や原材料価格の下落という外部環境の影響を受けやすい経済構造になっている。吉林は自動車、医薬品などの産業が育っており、これら地域の中では、そうした影響は限定的で、成長率の鈍化は比較的小幅に止まっている。

 

これらの結果、東北部は総じて商業銀行の公表不良債権比率も上昇している。銀行監督委員会によると、昨年9月末時点の全国ベースでの不良債権比率は1.59%だが、山西は最も高い4.93%、また黒龍江は3.6%、吉林3.67%だ(2016年1月7日付21世紀経済報道)。

全国で最も高い成長率を記録している重慶の事情とは?

他方、ここ数年2桁成長を維持し、昨年も11%と全国で最も高い成長率を記録した重慶は、基礎インフラ投資がなお旺盛な他、東部沿海部から内陸部への産業移転の受け皿となり、自動車・電子産業群が経済の過半を占める一方、石炭や鉄鋼といった設備過剰産業の割合が低下している。

 

中国経済全体の減速の大きな要因は固定資産投資の落ち込みにあるが(図表2参照)、重慶の固定資産投資は15年17.1%増、14年比0.9%ポイントしか落ちておらず、堅調だった。また1昨年から3次産業の比率が2次産業を上回り、金融を含むサービス産業が成長の一翼を担うなど、産業構造変化が成長を支えている。

 

【図表2 投資の動向】

(出所)中国国家統計局
(出所)中国国家統計局

 

伝統的に鉄鋼業に依存している河北は、全国平均を若干下回る6.8%成長だったが、比較的落ち込みが小さいのは、各種機械設備製造(中国で言う装備製造業)の発達がある。装備製造業が工業生産に占めるシェアは23.1%、成長への寄与は鉄鋼を大きく上回るようになった。第3次産業の成長への寄与も59.3%、2次産業の22.3%を大きく上回り、これらが成長を支えている。

 

なお政治的には、広東と重慶の共産党委書記は各々、若手で次世代指導者の最有力候補と見られている胡春華と孫政才だが、広東の昨年GDPは7.28兆元、1989年以降、省市区で最大規模となっている地位を維持、また重慶は全国で最も高い成長率を記録している。中国経済全体が鈍化する中で、広東と重慶の経済だけがよいという“風景独好”で、両人が“出尽風頭”、最も脚光を浴びていること、経済面で一定の業績を挙げ、中央の信頼を得た格好になっているとの見方が中国内で広がっている(2016年1月22日付中国嘹望など)。

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

金森 俊樹

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

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