前回は、物件の売却を有利に進める方法を説明しました。今回は、物件の所有年数によって、最適な売却のタイミングが異なる理由などを見ていきます。

所有期間が5年に満たなくても売りに出すケースとは?

物件の所有年数によって、売却のタイミングは異なります。その考え方は、いくつかあります。

 

まずひとつ目が、譲渡税に基づく考え方です。具体的には「所有期間5年が過ぎた」タイミングで、売却を検討することになります。譲渡税とは、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算した譲渡所得にかかる税金のこと。これには、次の3通りがあります。

 

●短期譲渡税・・・売却した年の1月1日現在で「所有期間5年以下」の場合、所得税と住民税あわせて39%の短期譲渡税がかかる。

 

●長期譲渡税・・・売却した年の1月1日現在で「所有期間5年超」の場合、所得税と住民税あわせて20%の長期譲渡税がかかる。

 

●復興特別所得税・・・2013年からの25年間、所得税に対して2.1%の税率がかかる。そのため譲渡所得にかかる所得税は、本来の所得税と復興特別所得税の合算となる。

 

この復興特別所得税を含めて、所得税の税率を、長期譲渡所得の場合が15.315%、短期譲渡所得の場合が30.63%と表記される場合もあります。この譲渡税の仕組みに合わせて、一般的には所有して5年を過ぎたところで売却を意識するオーナーが多いのです。

 

短期譲渡の場合、5年未満では税金が40%近くかかるため、よほどの売却益が得られるようでなければ売却を検討しないのが一般的です。逆にいえば今のように市況が良く、40%の譲渡税を加味しても利益が出るときは、所有期間が5年に満たなくても売りに出すべきです。

 

一方で長期譲渡の場合は税率が低くなるので、所有している期間にきちんとキャッシュフローが得られたのであれば、売却益プラス運用益の両方を得ての売却となります。

減価償却費の計上が終わったタイミングで売却する手も

ふたつ目が、減価償却に基づく考え方です。ここで気を付けたいのが、簿価の概念です。

 

簿価とは、物件取得価格から減価償却を引いた金額のこと。所有年数が長くなると簿価も低くなるため、利益が出やすくなります。売却時には減価償却の年数を確認して、簿価を把握しておく必要があります。

 

所有物件が築年数の古い木造物件であれば、「減価償却費の計上が終わった」タイミングで所有物件の入れ替えを検討するオーナーも多いです。その理由は、減価償却がなくなったため計上できる経費が減るから。本業がサラリーマンで所得税率の高いオーナーほど、ここでの税負担は大きくなります。

 

そこで減価償却の終わった不動産を売却して、新たに不動産を購入し、減価償却費を再度計上し直すというわけです。

 

このように、前もって理解しておくと便利な売却の目安があります。短期譲渡の場合は市況優先となりますが、長期譲渡や減価償却を目安とした売却の場合は、その2~3年前から手を打つことで、より高値での売却を狙うことができます。

 

なお、法人の場合は譲渡税ではなく法人税となるため、短期・長期の考え方は無関係となります。

本連載は、2015年10月26日刊行の書籍『万年赤字物件を驚異の高値で売る方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

万年赤字物件を 驚異の高値で売る方法

万年赤字物件を 驚異の高値で売る方法

新川 義忠

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産投資ブームが過熱する中、多くのサラリーマン投資家が誕生しています。家賃収入で不労所得を得たい・・・皆、そんな夢を描いて収益不動産を購入するのですが、誰もが成功しているわけではありません。 そもそも、全国の…

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