前回は、生命保険の管理を委託する「生命保険信託」のメリットをお伝えしました。今回は、万が一の際にも大切なペットを守り続けられる「ペット信託」の活用法についてを見ていきます。 ※本連載は、2015年10月に刊行された税理士・鈴木和宏氏の著書、『検討してみよう! 家族信託の基礎知識』(ファーストプレス)の中から一部を抜粋し、スムーズな不動産移転や、残された家族の生活を守る方法についてやさしく解説します。

自分に何かあってもペット信託で「希望の世話」を実現

妻:先日、Oさんのお家にいったら、可愛いペットがいたよ。

夫:ペットか。うちも飼うか?

妻:今は子どもと一緒に住んでいるので、いらないわ。

夫:そうか。ペットを飼うと世話や費用もかかるしな。

妻:病院代やシャンプー代、食費、服とか・・・。

夫:考えたら費用は人間以上にかかるかもしれないな。

妻:そうね。飼い主が亡くなったらどうなるのかな?

夫:それも可哀そうだな。

 

ペット信託への関心が高まる背景には、飼い主とペット双方の高齢化があります。ペットフード協会の「平成25年度全国犬・猫飼育実態調査」によると、犬の飼育率が最も高いのが50代(20%)。次いで、60代(16.4%)です。猫でも、50代(11.8%)と60代(10.9%)です。

 

犬や猫の寿命も延びています。平成22年度に犬の平均寿命は13.9歳でしたが、平成25年度には14・2歳に、猫は同14・4歳だったのが同15歳に延びています。ペットを愛する人は増え続け、今や子どもの出生者数約103万人に対し、犬猫の飼育数は約2100万匹です(出生者数出所:厚生労働省平成24年人口動態統計。飼育数出所:一般社団法人ペットフード協会調べ)。

 

ペット信託は飼主の方が生きている間に、大切なペットに将来必要な費用を相続財産等から分離するために活用されます。今後、健康問題や高齢が理由で大切なペットを飼い続けられない場合など、ペット信託の需要は高齢化に伴い拡大すると思われます。

 

遺言でペットの世話を頼んだとしても、頼まれた受託者の善意に頼るしかありません。遺言にペットの世話の方法、たとえば「このフードを食べさせて欲しい」「ワクチンはこれ」「この動物病院で受診して欲しい」などの要望を入れても、それが実現できるとは限りません。

 

ペット信託では、信託契約を開始する条件として、委託者が生きている間、たとえば「介護施設に入所したとき」などという条件をつけて、希望する世話が実現できているか見守る設計も可能となります。

 

したがって、「ペットが心配だから、入院はいやだ」「ペットを介護施設に連れて行くのはかわいそうだから、今の家で一人暮らしは心配だけど引越しはしたくない」という心配が解消されます。

受託者に強制力と監視力をつけられるペット信託

ペット信託は、ペットの世話にあたる受託者に対して、強制力と監視力をつけることができるという特徴があります。

 

なお、ペット信託には「会社を自分で設立する方法」と、ペット信託専門のNPO法人などに依頼する方法」があります。会社を自分で設立する方法では、信託法の民事信託の仕組みに基づいて手続きします。ペット信託専門のNPO法人などに依頼する人には、専門の信託機関が用意されています。

 

ペットのために生前からお金を預けておき、もしペットの方が先に亡くなるなど信託が必要なくなったときは、預けていた金額とそれまでの費用の差額が返金されるシステムが多いようです。また、受託者を家族にする方法もあります。

 

[図表]ペット信託の方法と仕組み

 

検討してみよう!  家族信託の基礎知識

検討してみよう! 家族信託の基礎知識

鈴木 和宏

ファーストプレス

家族信託とは、信頼できる家族・親族や知人などが財産の預かり手(財産管理をする者)となり、「高齢者や障がい者のための安心円滑な財産管理」や「柔軟かつ円滑な資産承継対策」を実現しようとする民事信託の形態です。家族の…

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