認知した隠し子を「家族に隠し通す」方法はあるのか?

隠し子を認知しなかった社長に起こった相続トラブル。前回は、これを未然に防ぐための対策について解説しました。今回も、このケースにおける対策のポイントを見ていきます。

出生時まで戸籍を遡れば認知の事実も明らかに

前回に引き続き、隠し子を認知しなかった社長に起こった相続トラブルの対策について見ていきます。

 

●対策1 認知を知られたくない時には転籍という手段がある

認知をすると父子ともに戸籍の表記が変わります。子供の戸籍には「父」の欄に認知した男性の名前が入り、父の戸籍には左記のような記述が加わります。

 

「平成○年○月○日○○市○○ ○番地木下華子同籍義男を認知届出」

 

このため、もし家族が戸籍を閲覧する機会があれば、認知した隠し子がいることがわかってしまいます。ただし、この一文は転籍(戸籍を別の住所に移す)などにより新しく戸籍を作り直した時には記載されなくなります。あまり知られていませんが、戸籍は実在する場所であれば、日本中どこでも好きな場所に移すことができます。自分とはまったく関係がなくても、六本木ヒルズや田園調布のお屋敷を本籍地にすることが可能なのです。

 

わざわざそんな場所にするのは不自然ですが、「我が家のルーツである本家の場所に本籍を移したい」など、適当な理由を付けて転籍することは可能です。費用はほとんどかかりませんから、家族にどうしても知られたくないなら転籍の手続きをとることで、転籍した後の戸籍を見るだけでは隠し子の存在を知ることはできなくなります。ただ、転籍しても戸籍の見かけが変わるだけなので、以前の戸籍を遡れば、認知した子供がいることは判明します。

 

社長が亡くなり相続が発生すると、法定相続人を特定するため社長の出生から全ての戸籍を入手します。最終的に法定相続人全員の合意がなければ、法的に相続が正しく完了したと認められないためです。大きな額の相続ではほとんどの場合、税理士や弁護士などの専門家が依頼されて実務を引き受けます。

 

遺産分割を決めた後に、隠し子など把握していなかった法定相続人がいたことが判明すると、遺産分割作業がやり直しとなります。そのため相続が発生したら、まず相続人を特定するために、全ての戸籍を出生時まで遡って調べるのです。認知している子供がいることはその過程で明らかになるので、転籍はそれまでの一時しのぎと考えておくべきです。

子供側から認知を求められる「強制認知」

父親に求めても認知してもらえない時、子供には裁判所に「強制認知」を求めるという手段があります。家庭裁判所に訴えることで、強制的に父子関係を認定させる手続きです。子供の側から認知を求めるこの手続きは二段階に分かれています。

 

まず、子供の訴えを受理した家庭裁判所は、父親とされる男性に対して「認知するのですか?」と合意を求める調停を行います。そこで男性が拒否した場合、子供の側は「認知請求訴訟」を起こすことができます。この訴えが提起されると、両者の合意のもとDNA鑑定が行われ、遺伝学的な判定が求められるようになります。さらに、その結果を基に審理が行われ、DNA鑑定で父子関係が認められた場合には、法的に父子と認める判決が下されるのです。

父親の死後から3年以内であれば認知請求が可能

本連載の9回で紹介した二階堂社長のように、死後に認知を求めて請求を起こされることもあります。これは「死後認知」と呼ばれる手続きで、隠し子の側は父親の死から3年後までこの訴えを提起できます。

 

「死後認知」の訴訟では本来は訴えの相手となる父親が亡くなっているので、便宜的に検察官が訴えの相手となり、判定についてのチェックを行います。裁判所では、兄弟姉妹など近親者の協力を得てDNA鑑定を行い、父子関係を判断します。兄弟姉妹などがDNA鑑定を拒否すると審理は複雑になりますが、当時のさまざまな事実関係によって検討が行われ、認められる可能性もあります。

 

DNA鑑定で父子関係が認められると子供の請求が通り、晴れて認知されることになります。強制認知と同じく、子供の認知請求の権利は誰にも侵害できない権利なのです。生前の認知がどうしても難しい場合には、遺言書で認知をしておくのもよいでしょう。生前に認知するだけでなく、子供には両親の愛情を相続させることが一番大切です。

 

次回も、隠し子を認知しなかった社長に起こった相続トラブルの対策について見ていきます。

本連載は、2015年10月27日刊行の書籍『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

新月税理士法人 代表社員

平成17年3月税理士登録 平成23年5月新月税理士法人設立
お客様の人生に添ったタックスプランを設計するタックスデザイナー。争いになる前の相続人同士の関係に配慮した細やかな調整から事業承継および相続のための株価算定、納税猶予などの資産税対策を通じてオーダーメイドの生涯タックスプランをデザインする。

著者紹介

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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