クリニック開業時の「スタッフ採用」を成功させる方法

医療業界全体が人材不足の中、どのクリニックも優秀なスタッフを確保しようと懸命になっています。今回は、開業時のスタッフ採用、中でも一般スタッフの採用について見ていきます。

見極めるべき「採用」のチェックポイント

クリニックの集患は優秀なスタッフを揃えられるか否かによって左右されます。そのために、開業時のスタッフ、すなわちオープニングスタッフ選びには、細心の注意を払う必要があります。

 

オープニングスタッフは、通常、求人広告等で広く募集をかけ、面接を経て採用することになります。面接の際には、以下の①から⑤までに挙げた事項をチェックしてみてください。長年、クリニックで採用面接をお手伝いしてきた経験から、このうちのひとつにでもあてはまるような人は、勤め始めてから何らかの問題を起こす可能性が高いので、採用は見合わせた方が無難でしょう。

 

①入室から退室までの一挙手一投足において常識を欠いた点がみられる
クリニックにおける患者への接遇は重要です。引いた椅子を退出時に元に戻さない、面接時にコートを脱がない、香水がかなり鼻につくなど、基本的なマナーや常識を身につけていない人は、一事が万事ではありませんが、傾向として患者に対する接遇に問題が発生する傾向が多いといえます。

 

こうした事象は、採用してからの教育ですぐに改善できることではないため、面接時点で選別しておく必要があります。

 

②労働条件や待遇に関する質問が多い
面接で「残業計算はどのようにするのか」「有給取得にあたって制約はあるのか」「昇給は基本給の何%なのか」「制服は自前なのか、貸与なのか」「院内履きは支給されるのか」などと労働条件や待遇等に関する細かな質問をいくつもしてくる求職者がいます(もちろん、クリニックとしては労働基準法等の諸規則を遵守することは言うまでもないのですが・・・)。

 

面接時間は、長くても1人あたり15分程度しかありません。そのわずかな時間で自分自身が医療従事者としての適性があるということをアピールすることが最重要課題であるにもかかわらず、このように労働条件や待遇等ばかりに話が終始するタイプの人は、いままで数々の職場を転々としてきたジョブホッパーの可能性が高いといえます。

 

もしその通りであるとすれば、ささいな不満があれば簡単に辞めてしまうでしょうし、「朱に交われば・・・」ではありませんが、1人でもこうした人がいると周りのスタッフにも何かと悪影響を及ぼす可能性も高くなります。

 

なお、私が面接官を務める場合には、最後に、「何か他に質問はありますか?」と必ず尋ねるようにしています。その際に、「待ってました」とばかりに、ノートを取り出してあらかじめまとめておいた質問を次々と浴びせてくる人が時折いますが、こうした人については、やはり同様の理由から採用を見合わせるようにしています。

 

③以前の勤務先の悪口ばかりを言う
前職の退職事由を質問すると、その勤務先の雇用主やスタッフの悪口ばかりを言う人がいます。このような人は、当院を辞めた後に、同じようなことを次のクリニックの面接でも繰り返すおそれがあります。あえて火中の栗を拾って、将来、嫌な思いをする必要はありません。

 

④清潔感がない、華美な格好をしている
髪がボサボサであったり、目ヤニがついたままであったりと清潔感のない人は論外です。またそれ以外にも化粧がひどく濃かったり、やたらとアクセサリーを身につけていたり、爪を伸ばして派手な色のマニキュアを塗ったりしているような人は、見識を疑います。これらの人たちは外見だけで、医療従事者として不適格であると判断して差し支えないでしょう。

 

⑤喋り過ぎる
面接が始まるや否や、まるで機関銃のように一方的に喋り続け、面接官が全く質問できないような人もいます。このような人は、院長の指示も一方通行でコミュニケーションが取りづらく、また騒々しいので院内の雰囲気も乱してしまいます。さらには、患者の話も聞いてあげないので、クレームが殺到し、とんでもない状況になってしまうことは必至です。

 

こうした点とは反対に、優秀な人材を得るためのチェックポイントとして特に重要な点は、「素直で柔軟性がある」「ニュートラルで色がついていない」ことです。このような人は、たとえこれまで医療機関で働いた経験がなかったとしても、積極的に仕事を覚えようとしますし、院長の指示にも従順であるため、またたく間に成長していきます。

 

また、特に新規開業時においては、こうしたタイプの場合、院長自身が当該スタッフを自院のカラーに染めていくことが可能なので、人事におけるストレスを軽減できます。

悪筆でないか、他のクリニックに応募していないか

面接実施前において、求職者に対して、求職理由や要望事項などを尋ねる質問書を手渡し、自筆で回答してもらうことをお勧めします。

 

これは、昨今、ほとんどの求職者が履歴書をワープロを用いて作成してくるので、求職者自身の筆跡を知ることが困難であるからです。クリニックの事務仕事においては、やはり字を書くことも多いので、極端に悪筆な人では困ります。

 

そこで、このような質問書を利用して、しっかりと求職者の筆跡を事前に確認しておくのです。特別、字がうまい必要はありませんが、丁寧な字を書くことは大切です。雑でいい加減な字を書く人は、中には例外もあるでしょうが、総じてすべてにおいて適当である傾向が強いので、高額医療器械を扱ったり、薬品の管理であったり、またカルテの取り扱いにおいて問題が発生する可能性が高いといえます。

 

また、この質問書の中には他のクリニックの求人募集に応募しているか否かを確認する項目を入れておくとよいでしょう。

 

求職者の中には、選考後に「採用です。水曜日に詳細を伝えたいのでクリニックにお越しください」と電話連絡をすると、「実は、別のクリニックでも先日面接を受けていて……金曜日には結果が出るので待ってもらえませんか」などという返答をする人がいます。こうした人が求職者にたくさん交じっていると円滑な選考と採用が妨げられてしまいます。

 

質問書において、併願の有無を事前に確認することで、ただでさえ忙しい開業前の時間を節約することができるのです。もちろん、併願であっても雇いたいような求職者は例外といえますが、絶対数は少ないでしょう。

 

もうひとつ付け加えるならば、質問書に開業前の準備日程を記載しておき、その日程における出勤の可否を求職者にマーキングしてもらうのです。

 

というのも、開業準備期間においては、雇用契約、医療器械の操作説明、電子カルテの入力指導、接遇研修といった重要なオリエンテーションがたくさん行われます。プライベートな用事が多々あってほとんど出席することができない人については、採用対象から外しておかないと円滑な準備を進めていくことができません。

 

また、こうした事前準備にほとんど出席ができない人は、たとえパート希望であったとしても、開業後もシフトを組みづらい傾向が強いことも事実ですので、注意しておくべき点のひとつとなります。

 

次回は、「スタッフ採用」のその他の留意点を見ていきましょう。
 

本連載は、2016年4月刊行の書籍『改訂版 クリニック開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

みなとみらい税理士法人 髙田会計事務所 所長 税理士

1965年生まれ。兵庫県出身。
1984年栄光学園高等学校卒業。
1988年上智大学文学部新聞学科卒業。
2002年税理士登録。
2003年神奈川県鎌倉市に髙田会計事務所を開業。
2011年税理士法人化をして神奈川県横浜市西区へ移転。みなとみらい税理士法人髙田会計事務所(東京地方税理士会横浜中央支部所属)となり現在に至る。2016年4月現在、スタッフ総数63名、顧問先総数837件の医科歯科に特化した会計事務所の所長を務め、これまでのクリニック開院サポート実績は600件を超える。

著者紹介

連載成功する「クリニック 開業」のノウハウ

改訂版 クリニック開業読本

改訂版 クリニック開業読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

2000年から2015年の医療機関の倒産件数は527件。経営破綻した医科・歯科クリニックの8割は破産を選択せざる得なく、再起も難しい状況です。このような厳しい状況の中でも集患に成功しているクリニックが存在するのはなぜでしょ…

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