今回は、使い道のない(価値のない)土地を所有してしまった場合における、相続時の問題点について見ていきます。

売却できずに固定資産税だけを払い続ける不良資産

前回に引き続き、騙されて使い道のない土地を保有してしまったケースの相続時の問題点について見ていきます。

 

●問題点1 原野商法による土地の購入

相続対策として財産の調査をしていると、使い道のない土地を所有しているケースというのはよくあることですが、中にはLさんのように「原野商法」にひっかかって価値のない土地を買わされたということもあります。


原野商法とは、悪質な不動産業者などによる悪徳商法です。その手口は、北海道などの山奥にあるほとんど価値が認められない原野を「近く巨大ショッピングモールができたり新幹線が通ったりなど開発される予定があるので、地価の値上がりが見込めますよ」などと偽って高額で売りつけるといったものです。Lさんに購入時の資料を見せてもらうと、近隣の開発予定について書かれた新聞記事や、土地の測量図は全くのデタラメで偽造されたものでした。


活用できない原野となると、売却もできず誰ももらってくれないので、ずっと所有し続けるしかありません。相続では価値がないに等しいので評価額こそ高くはありませんが、単なるお荷物財産ですから誰も欲しがることはありません。固定資産税だけを支払い続けなければならない完全な不良資産です。


別のケースでは、バブルも弾けて人気もなく寂れたリゾート地の土地を持っている人がいて、全く利用していないにもかかわらず、固定資産税以外に年間に土地の管理費として20万円を支払っているということもありました。所有しているだけで損になるわけですから、無料でもいいので隣地の所有者に譲りたいとその土地の管理組合に申し出ているのですが、それでもなかなか話はまとまっていないようです。


Lさんは購入代金として1坪当たり5000円、1000坪ですから500万円を支払っていました。Lさんとしてはそこから価値が上がっているから1000万円くらいになるのではないかと期待していたようですが、1000万円どころか100万円でも買い手がつかないような土地だったのです。

経済状態の違いも遺産分割で揉める要因に・・・

●問題点2 同居していない次女
Lさんは次女へ残す財産の当てがなくなったので、別の財産を考えなくてはなりませんでした。しかしLさん夫婦も長女もなぜか楽観的に構えています。というのも、次女は長女と昔からとても仲が良かったからです。次女が嫁に行ってからはさすがに会う機会は減っていましたが、次女が音大に通っていた時から長女は、自慢の妹として可愛がっていましたし、次女もそんな姉を慕っていたそうです。


仲が良いのはプラス材料にはなりますが、相続ではどのようなことが起こってもおかしくありませんので、やはり遺産分割についてはしっかりと確認しておくことが必要でした。
自宅について調べると、土地はLさん名義になっていますが、建物は長女の旦那さんの名義になっていました。

 

つまり、借地権を設定せずに、親の名義の土地の上に建物を建てていたということです。これは使用貸借と呼ばれるもので、第三者に土地を貸す場合には借地権を設定し地代の支払いが発生するのに対して、親族の場合などにはそれらを行わずにそのままにしているという状態です。


使用貸借の場合には何が問題になるかというと、相続時にLさんの自用地として評価され、借地権設定による評価減を得られないことです。地価の評価額は高い傾向にあるので、60%、70%の借地権割合を差し引くというのは節税になります。ただし、Lさんの場合には相続税は課せられるほどの財産ではないので、この使用貸借について問題はありませんでした。

 

問題が起こりそうなところといえば、やはり土地の取り合いです。次女が土地を半分寄こせとか、相応の現金を寄こせとか言ってきた場合には、妻と長女夫婦が住んでいる家が危ぶまれることになります。そのような心配をしなくてもいいとLさんは言っているのですが、Lさんの奥さんから、以前次女と話した時に、旦那さんの会社が傾きかけていて、今後の生活が心配であると漏らしていたことを聞きます。


経済状態の違いが遺産分割で揉める要因になることは述べてきましたが、どうにか最低でも遺留分相当の財産を残すことを考えないと危険な気配がしたのです。

 

次回は、解決策について見ていきます。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

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株式会社財産ドック

幻冬舎メディアコンサルティング

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