特集2016.1「争続」対策

相続・事業承継 相続対策
連載家族のトラブルをゼロにする「生前の相続対策」【第14回】

相続に備えて生前に実施したい「六つの対策」とは?

家族信託遺言書相続対策

相続に備えて生前に実施したい「六つの対策」とは?

前回は、夫の給与からこっそり貯金する、いわゆる「へそくり」が課税対象となるのかを説明しました。今回は、「円満相続」を達成するための対策とは何かを見ていきます。

家族信託、遺言書作成・・・状況に応じて対策を

 

自分の相続について考えるだけでもどうすればいいのかまとまらないのに、美千子の相続についても一緒に考えなければならないとは。相続とはなんと難しいものなのだ・・・腕組みして考え込む源太郎に、由井が声をかけた。

 

「大丈夫ですよ、亀山さん。簡単に言えばやることは六つしかありませんので」

 

そう言うと由井はホワイトボードに大きな字で書き始めた。

 

①相続人全員が納得するよう公平に分割する

②自宅や自社株などの分けにくい財産をどうするのか早めに決める

③生前贈与を活用する

④家族信託を検討する

⑤遺言書を作成する

⑥スマートノートを作成する

 

「以上です」

「三つ目まではわかりますが、四つ目の『家族信託』というのは?」

 

「相続に直接関わるものではありませんが、これから老後を安心して過ごすためにはぜひとも検討しておきたい制度です。認知症などでお金の管理や法律行為ができなくなった時のために、家族の誰かにそういった権利を預ける契約を結んでおくのです」

 

源太郎の脳裏に、経過観察が必要と言われた血栓のことが浮かんだ。あれ以来、ちょっとしたど忘れにもヒヤリと背筋が冷たくなる。

 

「それはぜひ考えておきたいです」

 

うなずいて由井が続けた。

 

「五つ目の遺言書作成は生前対策の要とも言えるものです」

「なるほど」

 

相づちを打ったものの、源太郎にはどうにも我が事とは考えにくかった。まるでテレビドラマだ。遺言書といえば、お金持ちが書くもので、それを巡って2時間ミステリーみたいなドラマが起きて・・・というイメージしかない。

 

それを自分が書く? だいいち、何をどう書けばいいのかさっぱり浮かんでこない。

 

「大丈夫です。六つ目がありますから。遺言書の作成に大きく関わるもので、相続対策では実は一番重要なものと私は考えています」

 

源太郎の思いを読み取ったように、由井が笑いかけた。

お互いの「常識」を理解することが円満相続の第一歩

「いきなり書いてくださいといっても、たいていの方は遺言書など書けません。ですからうちではこれをお渡ししています」

 

手元の書類フォルダから由井が取り出したのは、一冊のノートだった。表紙には「スマートノート」とタイトルが印刷してある。開けてみると、いざという時の連絡先や葬儀の手配、自分の人生などについて記入する欄が設けてあった。

 

「これは、いわゆるエンディングノートですよね?」

 

由井が肩をすくめた。

 

「エンディングという言葉が苦手なので『スマートノート』という名前をつけています」

「これがそんなに重要だと?」

 

「はい。相続対策はとても難しいもので、時にはうまくいかないこともあります。なぜだかわかりますか?」

 

漠然とだが源太郎にはわかる気がした。

 

「お互いの考えが違うからでは?」

 

「その通りです。相続については特に源太郎さん、子供さん、そして専門家である私、それぞれに『常識』と考えていることがあります」

 

「しかしながら、その差が結構大きいのです。たとえば源太郎さんは『長男が家を相続するのが当然』と思っているようですね。でも長女や次男の方は、『今の時代、平等に分けるのが常識』と考えているかもしれません。私は基本的には『みなさんが少しずつ譲り合って喧嘩にならない分け方をするのがいい』と考えています。それぞれの『常識』を理解し合いすり合わせていかないことには、相続対策はうまくいきません」

 

相続について話をしてみてはじめてわかったことだが、美千子とすら相続対策を重要視している度合いや子供たちに対する心配の深さが違っていた。長年連れ添った妻でさえそうなら、ましてや子供たちはどうなるだろう? だがそれを理解しなければ円満相続につながる対策など講じられないと思う。

 

「そこでこの『スマートノート』の登場です。相続対策の中心になる被相続人がノート作りを進める中でまず自分の考えを理解し、それを見た私や相続人も理解を深めることができるのです」

 

あらためて、源太郎はノートに目を落とした。24ページほどの薄いノートだ。こんなものに、それほど大きな力があるのだろうか? だが、800件以上の相続申告を扱ってきた専門家が言うのだ。やはり重要なアイテムであることは間違いないだろう。

 

「いい名前ですね『スマートノート』というのは。相続がその名の通りにいくよう、頑張って書いてみます」

 

源太郎は両手で取り上げたノートを額に押し当てた。

本連載は、2015年2月27日刊行の書籍『家族のトラブルをゼロにする生前の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

関 博

株式会社関総研結い相続支援センターアズタックス税理士法人 代表公認会計士・税理士

1948年生まれ。香川大学経済学部卒業後、大阪国税局に入局。等松・青木監査法人(現有限責任監査法人トーマツ)を経て、1978年関公認会計士事務所を開設。1983年に株式会社関総研を設立、2004年には株式会社関総研財産パートナーズを設立、そして2013年10月大阪証券取引所ビルに相続・資産管理支援専門の「結い相続支援センター」を開設した。日本M&A協会副理事長。

著者紹介

連載家族のトラブルをゼロにする「生前の相続対策」

家族のトラブルをゼロにする生前の相続対策

家族のトラブルをゼロにする生前の相続対策

関 博

幻冬舎メディアコンサルティング

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