前回は、ミュージションにおける「コスト」に対する考え方を説明しました。今回は、ミュージションの一番の特徴といえる「遮音性」へのこだわりを見ていきます。

ミュージションの遮音性は「仮説と検証」の賜物

ここで、ミュージションの一番の特徴である音の関係について説明します。

 

ミュージションは65dB/500㎐の遮音性能目標値を数字で公表していますが、これは業界ではあまり例のない試みです。本連載の第7回でも触れましたが、65dB/500㎐という性能は、隣の部屋でピアノを思い切り演奏していても、ほとんど聞こえないレベルです。

 

なぜ他の音楽対応マンションでそれをやらないのか。それは、音も建物も“生もの”であり、やってみなければ結果がわからない世界だからです。プロの音響技術の結集であるコンサートホールでさえ、想定したとおりの音に一度で決まることは難しく、作りながら実験をして補正を繰り返すのです。

 

マンション業界の中で、そのチャレンジにあえて踏み込み、国交省や業界団体が定める以外のものを性能数値として定め、お客様に対して表示しているのは、おそらくミュージションだけでしょう。それでもミュージションが65dB/500㎐を目指し、それを公表するのは、音という目に見えないものを売り物にする以上、そのレベルについて第三者が見てもわかる客観的な性能を示す責任があると思ったからです。

 

とはいえ、筆者はその知識を持ちあわせていなかったため、企画から工事にいたるまで、音に関する部分は、コンサートホールなどの音響監修を行う専門家と共同で進めました。しかし、彼らは、マンションのプロではありません。人が暮らすマンションは、音のことだけを考えて作るわけにはいきません。ですから、ミュージションを作る際は、こちらの持つマンションに関するノウハウと、音響に関するノウハウをすり合わせながら、幾度も仮説と検証を繰り返し、ときにヒヤッとする失敗を重ね、手探りで一歩ずつ進むといった地道な作業が必要でした。

 

また、このために自社施工部門を立ち上げ、遮音に関する技術や独自のおさまりを検討、習熟することに成功しました。こうして、他社が追随しにくい領域に到達することができたのです。

通常の倍の時間を要して遮音検査を実施

そんな話をすると、「ミュージションは工事が大変でしょうから、建築期間も長いのですか?」と聞かれることがあります。結論からいえば、ノウハウが集積された今、工期自体は通常のマンションと変わりません。ただし、その後の検査期間には、音漏れの検査および音に関する是正工事が含まれるため、通常の倍程度を要します。

 

つまり、建物が竣工(完成)してからが長いのです。物件規模によって違いますが、竣工から引き渡しまでの期間は通常のマンションだと、1ヵ月程度でしょう。それに対し、ミュージションは最低でも1.5~2ヵ月以上を必要とします。

 

この期間に何をするかといえば、主に、音がしっかりと遮音できていることをひと部屋ひと部屋確認するために行う検査です。この検査では、部屋の中央にスピーカーを置き、周波数125~4000㎐の雑音を発生させながら、居室の中の音と隣の部屋、上下階での音を同時並行的に測っていきます。

 

下記に示したのは、この検査で使用するグラフです。

 

【遮音性能を示すD値の特性グラフ】

 

125(低音)~4000㎐(高音)のオクターブ・バンド5ポイントで音圧レベル差を測定したとき、そのすべてで基準曲線を下回らない場合において、基準線にもっとも近い数値がその部位の性能と判定されます。

 

ミュージションが目標にしているのは、500㎐領域で65dBを超えることです。500㎐を基準にするのは、人間にとって耳に入りやすいといわれる中音域の値で、一般的に基準とされることが多いからです。低音と高音は非常に遮音が難しいのですが、ミュージション登戸と野方では結果的に全領域でD–65を超えることができています。

 

もしも目標値を達成していない場合には、原因が配管にあるのか、ダクトにあるのかなど、複数の仮説を立てながら、ひとつずつつぶしていくというアナログで緊張感の高い作業を続けることになります。この検査をミュージションの全室で行うため、とにかく時間はかかります。しかし、この地道な工程がミュージションの価値となるのですから、省略することはできないのです。

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    本連載は、2011年2月28日刊行の書籍『近隣物件よりも高い賃料で長く儲ける満室賃貸革命』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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