「絶対的に信頼の置ける人」以外は任意後見人にできない理由

高齢世帯にとっては使い勝手のよい「任意後見制度」ですが、使い方次第では悪用される可能性もあります。今回は、「誰に後見人を任せるか」という問題について考えてみます。

使い方次第では悪用される可能性もある任意後見制度

任意後見人には、本人の代理権が与えられます。任意後見契約締結時に、見守り契約や財産管理契約も併せて締結することで、高齢世帯にとっては非常に使い勝手のよいものになるということが、本連載の第6~8回でお分かりいただけたことと思います。


しかしひとつ、重大な問題があります。それは「誰を後見人に選ぶか」ということです。誰が後見人になるかで、この制度が実りあるものになるか、ならないかが決まると言っても過言ではありません。というのも、この制度は使い方次第で悪用される可能性があるからです。

契約発動前の後見人を監視する人は誰もいない

財産管理契約を締結すると、任意後見受任者は本人の代理として、通帳や印鑑を預かることができます。この段階では、まだ本人に十分な認知能力があるため、任意後見契約は発動していません。任意後見契約が発動すると、任意後見監督人がつきます。任意後見人は帳簿つけをするなど、財産管理をしっかり行い、任意後見監督人に財産目録等を提出しなければなりません。一切のごまかしがきかなくなるのです。


ところが、任意後見契約発動前の、財産管理契約に基づく財産管理を行う段階では、任意
後見受任者に監督人はつきません。これは何を意味するのでしょうか? 察しのいい皆さんなら、もうお分かりのことでしょう。任意後見人受任者に悪意があれば、「通帳も印鑑も握った。うるさい監督人もいなくて、やりたい放題」ということになるのです。


ですから、任意後見人には、絶対的に信頼がおける人を選ばなければなりません。悪質な人を選んでしまうと、本人の認知能力が低下してきて、任意後見契約を発動すべき時期になっても、申し立てを行わず、財産管理と称して横領を続けるということになりかねないのです。

本連載は、2015年11月25日刊行の書籍『老後の財産は「任意後見」で守りなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

南青山 M’s 法律会計事務所 代表社員 弁護士/公認会計士

弁護士・公認会計士。南青山M’s法律会計事務所代表。芦屋大学経営教育学部客員教授。
1973年愛媛県生まれ。1995年一橋大学経済学部卒業。2006年成蹊大学にて法務博士号取得。1995年監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社、上場企業の監査、M&A等に携わる。その後、会計事務所、法律事務所勤務等を経て2009年に南青山M’s法律会計事務所を設立。個人、企業にとって身近な法律問題はもちろん、税務問題、会計問題、それらが絡み合う複雑な問題についても、冷静に問題を分析し、依頼者にとって最も利益となる問題の解決方法を提案、実践している。著書に『ドロ沼相続の出口』(幻冬舎)。

著者紹介

連載老後の財産を守るための「任意後見」活用術

老後の財産は 「任意後見」で守りなさい

老後の財産は 「任意後見」で守りなさい

眞鍋 淳也

幻冬舎メディアコンサルティング

昨今、高齢者を狙った詐欺や「争続」が新聞やテレビなどのメディアで盛んに取り沙汰され、老後の財産管理に対する不安が高まっています。高齢になると判断能力が低下してしまい、望まないかたちで財産を失ってしまうケースは多…

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