第三者による遺言書の「改ざん」リスクを低減する方法

前回は、「生命保険金」に関する相続トラブルの例と、遺言書を作成する際のポイントを紹介しました。今回は、遺言書を第三者に「改ざん」されるリスクを抑える方法を見ていきます。

遺言書は封筒に入っていなくても無効にはならない

<事例11>

Aさんの夫が死亡しました。夫の両親はすでに他界し、Aさんとの間には子もいませんでした。Aさんは相続人は自分一人だと思っているのですが、ある日、被相続人の弟から、妻Aさんに対して相続分として500万円支払うようにとの要求があり、驚きます。

 

夫の財産には夫名義のマンション(時価2000万円)が含まれていました。その後、夫の自筆証書遺言が封筒に入っていない状態で発見されます。遺言書にはそのマンションを含むすべての財産をAさんに相続させる事が記載されていました。そうした状況の中、Aさんは義弟に500万円支払うべきかどうかで悩むことになってしまいました。

 

連載第18回目で紹介した事例5と同じように、亡くなった夫の兄弟姉妹から相続分を請求されたというケースです。被相続人が遺言書を作成していたという点も同様です。ただ、この例では公正証書遺言ではなく自筆証書遺言であること、また、遺言書がなくなっていたわけではなかったことが違います。

 

まず、確認しておくと、遺言書には全財産を妻に相続させる旨の記載があったことから、遺言書が有効であれば、弟には一銭たりとも支払う必要はありません。何度も繰り返しているように、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないからです。

 

気になることがあるとすれば、遺言書が封筒に入っていなかったという点でしょうか。遺言書は非常に重要な文書であることから、偽造を防ぐためにも、しっかりと封をしていなければいけないと思っている人が多いかもしれません。このケースでも、「封筒に入っていない遺言書は無効なのでは?」と考える人がいることでしょう。

 

しかし、遺言書に封をしなければならないという法律上の規定はありません。つまり、封をしていなくても遺言書の効力には影響がなく、無効にはならないのです。

 

さらに言えば、封がなされている場合に、家庭裁判所の検認以前に、誰かが封を破るなどして故意に開封したとしても、遺言書の効力には影響しません(ただし、過料の制裁はあります)。

「公正証書遺言」なら改ざんされる心配はない

逆に言えば、自筆証書遺言は、相続人等の手で容易に開封されてしまうおそれが大きいということです。開封した結果、自分に有利な内容の遺言書が無効となるのであれば、そのような危険を冒すことをためらうでしょうが、そうでないのなら、「よし、開いて見てしまおう」と思うのが人情でしょう。

 

そして、実際に開封してしまったときに、自分に不利なことが記されてあったら、遺言書を破棄することや、あるいは自分の利益になる形に書き換えることを思わず考えてしまう人は少なくないはずです(実行するかはどうかはともかくとして)。

 

このように、自筆証書遺言には、開封され、さらには破棄や偽造が行われる危険性があるという非常に大きなリスクがあります。

 

それに対して、公正証書遺言にはそのようなリスクはありません。先に述べたように、たとえ紛失したとしても再発行できます。ここまでの事例で取り上げてきた自筆証書遺言の数々のデメリットに鑑みれば、遺言書を作成する場合には、やはり公正証書遺言を利用するのがベストということになるでしょう。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『ドロ沼相続の出口』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

眞鍋 淳也

南青山 M’s 法律会計事務所 代表社員 弁護士/公認会計士

弁護士・公認会計士。南青山M’s法律会計事務所代表。芦屋大学経営教育学部客員教授。
1973年愛媛県生まれ。1995年一橋大学経済学部卒業。2006年成蹊大学にて法務博士号取得。1995年監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社、上場企業の監査、M&A等に携わる。その後、会計事務所、法律事務所勤務等を経て2009年に南青山M’s法律会計事務所を設立。個人、企業にとって身近な法律問題はもちろん、税務問題、会計問題、それらが絡み合う複雑な問題についても、冷静に問題を分析し、依頼者にとって最も利益となる問題の解決方法を提案、実践している。著書に『ドロ沼相続の出口』(幻冬舎)。

著者紹介

連載ドロ沼相続の対処法と事前防止策

ドロ沼相続の出口

ドロ沼相続の出口

眞鍋 淳也

幻冬舎メディアコンサルティング

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