相続において土地などの不動産はトラブルの大きな「火種」となります。今回は、相続財産に多くの土地を含む場合の留意点について見ていきます。

土地は形状・価値に違いがあるため、分けにくい

前回に引き続き、【ケース1】Aさん・90歳/子4人(長男のみ異母兄)の相続時の問題点について見ていきます。

 

●問題点1 土地が多い
Aさんの場合、土地に対する相続対策が不十分でした。現預金で納税資金が確保されていたので、相続税対策や納税資金対策について大きな心配はいらなかったものの、土地の遺産分割で争う危険性があったのです。

 

相続において土地などの不動産はトラブルの火種です。土地の数が多ければ、誰がどう分割するかの話し合いで炎上してしまうことが考えられます。なぜ土地の分割がうまくいかないのか、それは一つとして同じ土地というものがないからです。Aさんの場合には、自宅敷地や更地、貸地を含めて20筆もの土地を所有していました。4人で分割しようとして「5筆ずつにしましょう」と単純に分けて平等になれば問題ありませんが、なかなかそうはいきません。

 

まず、言うまでもなく土地はそれぞれ面積や形状が異なります。100坪、200坪とキリよく分割できる土地はそうそうありませんし、同じ形の土地などはこの世に一つも存在しません。面積の合計で大体平等に分割すればいいようにも思えますが、それだけで平等になることは難しいでしょう。なぜなら、その次に価格が問題となるからです。

 

土地は「一物四価」と呼ばれ、土地の評価額を表すものとして、時価(実勢価格)公示価格、路線価、固定資産税評価額の4つが使われています。相続税を算出するときには一般的には路線価が使用されますが、路線価は決められた通りに計算してしまうと画一的な評価にしかなりませんから、そこから土地の状況を踏まえて評価額を補正していかなければなりません。補正は専門家が知識や経験をもとに行うことで適正になされますが、専門家でも10人いれば10人とも違う評価額となるような複雑な計算が必要です。

 

たとえ熟練した専門家がすべての土地を適切に評価することができて、面積等も、合計の価格でも平等な分割を考えられたとしても、「本当に平等」に分けられるかと言われれば、必ずしもそうとは言い切れないのです。

 

今度は、土地の利用価値という問題が浮上します。更地ならば利用しやすいかもしれませんが、がけ地のような形状の場合、使い道がかなり限られてしまいます。Aさんも実際にがけ地を幾つか所有されていました。相続人の中にはがけ地ならいらないと思う方もいるでしょう。その方にとっては、たとえがけ地がある程度の評価額になるとしても、ゼロに等しい価値なのです。

 

また、Aさんの1000坪の自宅敷地の中には、長男の家も建てられていました。つまり、その自宅敷地は、すべてとはいかないまでも、ある程度の比率を長男が相続しないと長男にとってもそれ以外の人にとっても使い勝手の悪い資産になってしまいます。とはいえ1000坪という広大な敷地ですから、それをそのまま長男が相続すると、長男に対する資産の比率が高まってしまうことは避けられません。

 

面積、形状、価格、利用価値などを複合的に考えれば、一つも同じ土地がないことがわかってきます。どこか一つを見落としただけでも不平等感が出てしまい、揉めてしまうことが出てくるのが遺産分割です。多くの土地が相続財産にある場合、トラブルを起こさないようにするとしたら、土地一つひとつの総合的な価値を計算し、分割時の組み合わせについて、慎重に時間をかけて決めていかなければなりません。

 

そこで時間が必要となります。土地の価格を算出するだけでも、現地調査や役所調査などによってかなりの時間を費やすこともあるので、相続が発生してから相続税の納税期限までの10カ月間ですべてを問題なく終わらせるのは、実質的には難しいことでしょう。土地の分割方法が何も決まっていない状態で、20筆もの土地の価値や分割方法を一から考えて、皆が納得する方法に落ち着かせるには時間が少なすぎるのです。

 

Aさんの場合、多くの土地を所有しているにもかかわらず、遺産分割の詳細が指示されていないことは大きな問題でした。土地に対する価値観の相違から、分割時に揉めてしまう危険性が高い状態だったのです。

借地人がいると処分や整理が難しくなる

●問題点2 貸地(底地)が多い
土地の中でも、貸地はその処分や整理が難しいと言われている資産です。Aさんの場合、貸地が15筆もあったことも問題を起こす原因と考えられました。貸地には必ず借地人がいます。それが足枷となり売却しようにも買い手が付きづらく、駐車場にするなど別の活用方法を考えても、借地人と話し合って、立ち退くことに納得してもらわないことには何もできません。定期借地権であれば更新規定の適用を受けないことから、契約満了のタイミングを見計らえばいいのですが、そうでなければ何らかの対策を講じないと活用は難しいことになります。

 

利用しにくい貸地を相続しようと思う相続人は少ないと思いますが、それにもよらず、土地という不動産である以上一定の評価額があり、相続税をかさ上げする資産なので、相続においては不良資産と呼ばれているのです。貸地を整理する方法もいくつかありますが、時間を要します。Aさんの場合、多くの貸地がすぐに売却できるような立地でもなかったことや、場所によってはある程度の収益性があったことから、子どもたちが分担して相続する方がいいと判断しました。

 

貸地を分担するにあたって考えるべき要素に、土地の収益性があります。地代をもらって固定資産税を支払ったときの手残りが、意図せずに誰かが極端に多いとなれば不公平ですから、収益性でも納得し合えるという視点が必要です。

 

貸地の場合は他にも、その土地の借地人の素行や人柄などを気にする人も出てくるでしょう。滞納しがちで横暴な借地人よりも、確実に地代を支払ってくれる誠実な借地人を通常は望むはずです。貸地のこれらの要素は土地の価値につながってくることなので、更地としての土地の価値を算出すると同時に、収益性や借地人の条件をプラスして考えていくことが必要になるのです。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

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