前回に引き続き、オーストラリア(クイーンズランド州)不動産の相続手続きについて見ていきましょう。今回は、遺言の作成方法と、相続税の概要を見ていきます。

日本で作成した遺言はオーストラリアの裁判所でも有効

被相続人が遺言を作成していた場合であっても、オーストラリアの裁判所でその遺言の検認手続き(遺言執行者の選任手続き)を行う必要がありますから、その遺言がオーストラリアの裁判所で「有効な」遺言であると認められるものであることが必要です。

 

オーストラリアで有効な遺言とは、1981年相続法(Succession Act 1981)によると、書面でなされること、遺言者または遺言者の指示に基づき遺言者の面前で第三者が遺言者を代理して署名がなされること、2人以上の証人による署名がなされていることが必要とされており、役所や公証人などに登録される必要はありません。

 

また、オーストラリアは遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約を批准していますので、遺言が作成された地における法律に従って遺言が作成されていれば、その遺言を有効な遺言として取り扱うこととしています。

 

従って、日本人がオーストラリアの不動産に関する遺言を日本法の方式に従って日本で作成している場合、その遺言はオーストラリアの裁判所でも有効な遺言であるとして取り扱うことになります。

 

もっとも、実務的には、日本法に従って日本語で作成された遺言をオーストラリアの裁判所で検認するにあたっては、遺言の英訳を作成する必要があるとともに、その遺言が日本法に従って作成されていることの証明を裁判所から求められることも考えられますので、オーストラリアの資産については日本国内の資産に関する遺言とは分離して、オーストラリアの方式で遺言を作成することが望ましいでしょう。

 

そして、裁判所での検認手続きはオーストラリアの弁護士に依頼して行うことが現実的ですので、遺言の作成の段階からオーストラリアの弁護士と相談することをお勧めします。

 

なお、オーストラリアの弁護士費用を高いと感じる人が多いように思われます。しかしながら、自身でわざわざオーストラリアに行って手続きする手間と費用、また、慣れない裁判所での手続きを行わなければならないことを考えると、多少費用がかかるとしても、弁護士を起用することは不可欠です。

 

そして、弁護士を起用する際に費用について交渉することは可能ですし、費用の上限を決めるなどの取り扱いも可能ですので、まずは起用する前にしっかり交渉することが大切です。

 

なお、オーストラリアの弁護士は日本人がオーストラリアの不動産を購入する際の仲介業者(日本人であることが多いです)が紹介するケースが多いのですが、あまり弁護士費用についての説明をしないことが多いようですので、しっかり説明を求め、納得のいく説明がないときにはオーストラリアの事情をよく知る日本の弁護士にもセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

オーストラリアに日本のような相続税は存在しない

オーストラリアには日本法のような相続税が存在しませんので、相続に際してオーストラリア当局に納税申告を行う必要はありません。もっとも、オーストラリアの不動産を取得する相続人が日本国内に住んでいる場合には、オーストラリアの不動産の取得について相続税を支払う必要があります。

 

なお、オーストラリアの不動産の相続人がその不動産を売却したときに、被相続人の当該不動産の取得のために要した費用をベースとして、売却益が出たときに、そのキャピタル・ゲインの部分について所得税が課されることになります。

 

仮に相続人が日本在住の日本人である場合、日本国内外を問わず、すべての所得について納税する義務がありますので、オーストラリアの不動産を売却して譲渡益を得、オーストラリアにおいて税金を支払ったとき、日本においても確定申告を行い、所得税を支払う必要があります。

 

もっとも、この場合、オーストラリアで支払った税金については一定割合で控除することが可能となっています。

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    本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    永峰潤・三島浩光

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