生前贈与を併用して遺言書の効果を高める方法

遺言書は、相続トラブルを防ぐうえで有効的な手段ですが、他の相続税対策を組み合わせることによって、さらにその効果を高めることができます。今回は、その選択肢の一つとして生前贈与の具体例を挙げて見ていきます。

遺言書のトラブル防止効果をさらに高める「生前贈与」

本連載で見てきたように、遺言書は、相続トラブルを防ぐうえで最も効果的な対策といえます。それに加えて、他の相続対策手段を加えることにより、そのような遺言書のトラブル防止効果をより高めることが期待できるでしょう。

 

そのような選択肢の一つとしては、生前贈与が挙げられます。生前贈与は相続税を下げるうえで大変有効な手段ですし、それによって納税資金を確保することもできるので、相続税に関するトラブルが生じる可能性を大きく軽減することが可能となります。生前贈与を行う際のポイントとなるのは、贈与税の税率が、予想される相続税の負担率よりも低くなるような形で贈与することです。

 

そもそも相続税の負担率については、イメージしにくいところがあるでしょうから、具体例をもとに説明しましょう。

 

例えば、配偶者と子供2人が相続人で、基礎控除を引いた後の相続財産が8000万円(1億6000万円-基礎控除8000万円)の場合には、以下のような計算式によって税負担率が導き出されます。

 

8000万円×2分の1=4000万円 相続税600万円 税率20%
8000万円×4分の1=2000万円 相続税250万円×2=500万円 税率15 %
相続税 計(1100万円)

 

1.配偶者が相続財産の全部を相続した場合


配偶者の相続税0円
税負担率⇒0%

 

2.子供2人が相続財産の全部をそれぞれ2分の1の割合で相続した場合


配偶者が相続した財産    0円 相続税   0円   
子供①が相続した財産 8000万円 相続税 550万円   
子供②が相続した財産 8000万円 相続税 550万円   
計 1100万円
各税負担率⇒6.87%

 

3 配偶者が2分の1、子供がそれぞれ4分の1の割合で相続した場合 


配偶者が相続した財産 8000万円 相続税 0円   
子供①が相続した財産 4000万円 相続税 275万円
子供②が相続した財産 4000万円 相続税 275万円
計 550万円
各税負担率⇒6.87%

 

やはり配偶者と子供2人が相続人の場合、基礎控除を引いた後の相続財産が2億円で、これを法定相続割合で相続した場合は、次のような計算式によって税負担率が導き出されます。

 

2億円×2分の1=1億円 相続税2300万円 税率30%
2億円×4分の1=5000万円 
相続税800万円×2=1600万円 税率20%
相続税 計(3900万円)

 

配偶者が2分の1、子供がそれぞれ4分の1の法定相続割合で相続した場合


配偶者が相続した財産  1億4000万円 相続税    0円
子供①が相続した財産   7000万円 相続税 975万円 
子供②が相続した財産   7000万円 相続税 975万円 
計 1950万円
各税負担率⇒13.93% 

贈与税額と相続税額を比較して効果的な節税を検討する

このような相続税の税負担率を前提として、どのような贈与をすれば最も効果的な節税となるかを検討していくことになります。すると、分かりやすい多くの例としてまず思いつくのは、毎年の贈与額を111万円とするパターンでしょう。この場合、贈与税は1000円になります。まず贈与税の基礎控除額である110万円については課税されず、200万円以下の税率については10%だからです。

 

以下、贈与する額が、①210万円、②350万円、③500万円、④700万円、⑤1000万円、⑥1450万円の場合それぞれについて見ていくと、贈与税の税率、実質的な税負担率は次のようになります。

 

①210万円(贈与税10万円) 


基礎控除後  210万−110万=100万円 
贈与税の計算 100万×税率10%=10万円 
税引後の手取 200万円 税負担率⇒4.76 %

 

②350万円(贈与税26万円) 


基礎控除後  350万円−110万=240万円 
贈与税の計算 240万×税率15% −10万=26万円  
税引後の手取 324万円 税負担率⇒7.43%

 

③500万円(贈与税53万円) 

 
基礎控除後  500万−110万=390万円 
贈与税の計算 390万×税率20% −25万=53万円 
税引後の手取 447万円 税負担率⇒10.60%

 

④700万円(贈与税112万円) 

 
基礎控除後  700万−110万=590万円 
贈与税の計算 590万×税率30% −65万=112万円 
税引後の手取 588万円 税負担率⇒16.00%

 

⑤1000万円(贈与税231万円)  


基礎控除後  1000万−110万=890万円 
贈与税の計算 890万×税率40% −125万=231万円 
税引後の手取 769万円 税負担率⇒23.10%

 

⑥1450万円(贈与税445万円) 


基礎控除後  1450万−110万=1340万円 
贈与税の計算 1340万×税率50% −225万=445万円 
税引後の手取 1005万円 税負担率⇒30.69%

 

それぞれの金額における贈与税の負担率と、相続税の負担率を比べてみれば、どれだけの金額を贈与するのが最も効果的なのかイメージすることができるでしょう。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載相続争いを防ぐための「遺言書」のつくり方

大坪正典税理士事務所 所長 税理士

神奈川県横浜市出身。相続、事業承継、都市開発、企業再生支援業務などを中心に携わる。他士業とのコラボレーションによるワンストップサービスを提供。著書に『もめない相続ABC』(共著、日本相続新聞社)、『はじめての相続・贈与』(共著、明日香出版社)などがある。

著者紹介

相続争いは遺言書で防ぎなさい

相続争いは遺言書で防ぎなさい

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

相続をきっかけに家族がバラバラになり、互いに憎しみ合い、ののしり合う――。 故人が遺言書を用意していない、あるいはその内容が不十分であったために、相続に関するトラブルが起こってしまうケースは数多く存在しています…

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