今回は、相続で遺産がもらえる「法定相続人」の範囲についてみていきます。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

ご高齢の方が日々の生活で介護を必要とする場合、息子夫婦と同居していれば、やはり実際の介護はお嫁さんの仕事となることが多いわけです。親との同居といえば、確率的には長男さんとの同居率が高いですね。

 

例えば、長男の嫁が一年三六五日、朝から晩まで義父の介護に奮闘しても、残念ながらお嫁さんは法定相続人にはなり得ません。相続において、相続人になれる人の範囲と順位は民法に定められております。配偶者や子供、父母や兄弟姉妹等、いわゆる法定相続人がこれにあたります。ここには長男のお嫁さんは含まれません。

 

遠方に住む実の娘は、年に一度顔を見せに来る程度だが、長男のお嫁さんは一年中、昼も夜もなく親身になって介護してくれたとしても、やはり、実の娘は法定相続人であり、長男のお嫁さんは、法定相続人にはならないわけです。

 

もちろん、義父の死亡時、法定相続人たる長男さんがご存命であれば夫婦の財布は一つでしょうから、実質的には、長男の嫁にも幾ばくかの相続分は入ってくるわけですが、もし息子である長男さんが既に他界しているにもかかわらず、嫁は義父と同居して介護にあたっているなんて場合には、法定相続人ではない長男の嫁には、残念ながら遺産はまったく入ってこないことになります。

 

こんな場合は遺言を残すことで、長男の嫁へ遺贈するといった手もありますので覚えておくと良いかもしれません。ちなみに長男だけでなく次男の嫁や三男の嫁も法定相続人にはなれませんのであしからず。

 

 

法定相続人には優先順位がありまして、亡くなった人から見て「子や孫」「父母や祖父母」「兄弟姉妹」の順になっています。ここに夫や妻といった配偶者が入っていないのは、順番に関係なく必ず相続人になるからなんですね。

 

そして、配偶者の法定相続分は一緒に相続する人の順位によって異なるのですが、最低でも半分以上となっています。もちろん、他に相続人がいなければ全部もらえます。「二人で築いた財産」という考え方が強いのかもしれません。

 

ただ、一口に「夫」や「妻」といっても、内情は人それぞれだと思います。例えば、本妻とは別居して、二十年以上にもわたって内縁の妻と一緒に暮らしていた人が亡くなった場合はどうでしょうか。また、子供を成人まで育てた後に離婚して、亡くなる直前に自分の娘よりも若い女性と結婚した人の場合はどうでしょうか。

 

このあたりはわりと単純に決められていて、実質的にどんな間柄だったのかは関係なく、平たくいうと「婚姻届を出しているかどうか」だけで判断することになります。

 

ですから、五十年間連れ添った妻と離婚して、翌日に他の女性との婚姻届を出した直後に亡くなった人がいたとしたら、最後の妻が相続人になるわけです。ちなみに、前妻の相続分は、離婚した時点でゼロになっています。

 

先ほどの「二人で築いた財産」という考え方とは矛盾してしまうわけですが、このへんが法律の限界なのかもしれませんね。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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