秘密証書遺言の作成方法、メリット・デメリットとは?

遺言書の方式には、自筆証書遺言と公正証書遺言のいわば中間的な位置付けとなる「秘密証書遺言」があります。今回は、秘密証書遺言を中心に、遺言書を書く際の留意点についても見ていきます。

内容を誰にも知られない「秘密証書遺言」

遺言の方式としては、自筆証書遺言と公正証書遺言の他に、あまりポピュラーではありませんが秘密証書遺言もあります。


秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言のいわば中間的な位置付けとなる遺言です。一般的にはほとんど利用されていないようですが、公正証書であり署名以外はすべて自筆でなくてもよいことや、内容を誰にも知られないという利点もあります。また、公証人に会いたくないという人にとってもメリットがあるでしょう。

 

秘密証書遺言の具体的な作成方法は以下の通りです。


①遺言者がその証書(自筆代筆、ワープロでの作成も可)に署名押印のうえ封筒に入れて封印する。
②証人2人の立会いにより、公証人に提出する。
③公証人が封筒入りの遺言書を確認し、年月日、遺言者の申述を記載した後、遺言者、公証人、証人2人が署名押印する。

 

秘密証書遺言のデメリットとしては、費用がかかることや、内容の不備により無効になる場合があること、家庭裁判所の検認手続きが必要なこと、紛失の恐れがあることが指摘されています。このような短所があることを踏まえて、個人個人の状況に応じて、秘密証書遺言を利用するか否かを検討するとよいでしょう。

相続させる建物だけでなく付帯設備などのことも考える

遺言書を書く際には、相続財産の記載漏れに気を付けなければなりません。とりわけ財産の中に複数の不動産がある場合に犯しがちなのは、その不動産を相続人にどのように分けるかばかりに頭がいってしまい、本来、それに付随して考慮すべき事柄への配慮がすっぽりと抜け落ちたまま遺言書を作成してしまうという過ちです。 


例えば、被相続人が2棟のアパートを所有しており、それを2人の子供に相続させるため、「長男にはA棟、次男にはB棟を相続させる」という遺言書を作成したとします。この場合、A棟、B棟それぞれの建物自体は問題なく子供たちに相続されることになるかもしれません。


しかし、賃貸用の各棟には、いわゆる減価償却資産として付帯設備や備品が相続財産に該当することがあり、火災保険などの保険も付されているはずです。それらのいわば付随的な財産が誰のものになるのかは、この遺言書の文言では明らかになっていません。


遺言者の意思としては、当然、それぞれの建物を相続した者に付帯設備、備品、火災保険など保険の権利関係も相続させるつもりなのかもしれませんが、そうであるならば、その旨を「付帯する設備、中の備品、保険関係一切を相続させる」などという形で明確に示しておくべきです。さもなくば、解釈次第では、これらの付随的な財産に関しては、遺言書だけでは未分割の状態であるとみなされてしまうため、改めて遺産分割の協議を行わなければならなくなるかもしれないのです。


それから、やはり忘れてはならないのは私道の指定です。右の例でいえば、A棟、B棟の前に私道があった場合、私道の帰属についても遺言書の中で示す必要があります。例えば、「A棟は長男に、その他の財産は次男に」というような内容の遺言書を作成したとしたら、私道については、解釈上、次男の財産になってしまう恐れがあるのです。私道の権利関係は通行権や掘削権などが関わり、その後、開発を行う場合に非常に重要になるので、遺言書を作成する際には注意が必要です。


他には、法定果実についても見落とさないようにしましょう。法定果実とは、アパート、マンションを賃貸していたような場合に得られる賃料などのことです。遺言書で何も指定しなければ、そのまま法定相続分にしたがって分けられる結果となるでしょう。もしそれが望ましくないと考えるのであれば、遺言書できちんと自らの意向を示しておくことが必要になります。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載相続争いを防ぐための「遺言書」のつくり方

大坪正典税理士事務所 所長 税理士

神奈川県横浜市出身。相続、事業承継、都市開発、企業再生支援業務などを中心に携わる。他士業とのコラボレーションによるワンストップサービスを提供。著書に『もめない相続ABC』(共著、日本相続新聞社)、『はじめての相続・贈与』(共著、明日香出版社)などがある。

著者紹介

相続争いは遺言書で防ぎなさい

相続争いは遺言書で防ぎなさい

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

相続をきっかけに家族がバラバラになり、互いに憎しみ合い、ののしり合う――。 故人が遺言書を用意していない、あるいはその内容が不十分であったために、相続に関するトラブルが起こってしまうケースは数多く存在しています…

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