一般投資家はなぜヘッジファンドを「誤解」してしまうのか?

一般の投資家の間では、ヘッジファンド=ハイリスクといったイメージもあるようです。今回は、ヘッジファンドに対する「誤解」について見ていきます。

ヘッジファンドの全てが「ハイレバレッジ」ではない

ヘッジファンドの特徴でもう一つ忘れてはならないのが「レバレッジ」です。ヘッジファンドは、少ない資金で莫大な資金を調達して運用すると紹介しました。そのために、世界中の金融市場に大きな影響を与えるパワーを持っていることが知られています。

 

しかし、前回紹介した各投資戦略を見てもわかるように、一部には大きなレバレッジをかけて投資するヘッジファンドもあることは事実ですが、すべての投資戦略が必ずしも莫大なレバレッジをかけて投資しているわけではありません。

 

たとえば、債券アービトラージと呼ばれるような、わずかな金利差を狙って売買するヘッジファンドは、確かに億単位の資金を20倍、30倍にも膨らませて投資効率を上げようとしますが、リーマン・ショック以後、レバレッジに対する規制などもあってその倍率はやや低下傾向にあります。

 

このように、すべてのヘッジファンドがハイリスク・ハイリターンを狙って行動しているかというと、実はそうでもありません。「マーケット・ニュートラル戦略」などは公募投資信託の一部よりもローリスクな商品といってもいいでしょう。

 

こうしたレバレッジに対する警戒感や、ヘッジファンド=ハイリスクといったイメージは、実はヘッジファンドに対する知識のなさ、情報不足からきているような気がします。たとえば、株価が下落すると「ヘッジファンドの売りでマーケットが大きく売られました」という具合に、メディアによってマーケットの動きはみんなヘッジファンドが原因であるように報道されてしまうことがよくあります。

 

確かに、一部のグローバル・マクロやマネージド・フューチャーズのような投資戦略はそういった戦略をとることもあります。しかし、マーケット・ニュートラル戦略は割高、割安に対しての逆張り戦略なので、ヘッジファンドは相場全体の安定を維持する機能もあるわけです。

 

ヘッジファンドとは、「ファンド・マネージャー」が運用するわけですが、その運用者をサポートするのが次のような組織です。

 

●プライム・ブローカー・・・ヘッジファンドの取引執行や決済、空売りに必要な有価証券の貸し付け、そしてレバレッジを実行するために必要な資金の貸し付けといったサービスを提供する。ヘッジファンド新規設立時の援助や助言、さらには投資家の紹介なども行う。プライム・ブローカーの多くは、欧米系の大手投資銀行傘下の会社。ヘッジファンドは複数のプライム・ブローカーと取引するのが一般的。

 

●アドミニストレーター・・・いわゆる「事務管理会社」。取引記録や純資産額の計算、投資家への通知といったサービスを提供する。

 

●カストディアン・・・ヘッジファンドの保有する有価証券や現金などの保管サービスを提供する「資産管理会社」。プライム・ブローカーが兼務することもある。

 

ヘッジファンドが市場で空売りをしたり、レバレッジをかけて大きな金額で運用することができるのも、プライム・ブローカーのサポートがあるからです。そのプライム・ブローカーも大手欧米系投資会社の傘下会社がほとんどです。プライム・ブローカーが億単位の資金をすぐに調達できるのは、バックにいる大手銀行が融資しているからなのです。ヘッジファンドが急速に成長した背景には、こうしたヘッジファンド業界の構造的なものがあった、というわけです。

 

●国内ヘッジファンド運用会社の仕組み図

市場の値動きを増幅させている面は確かにあるが・・・

一方、リーマン・ショックはこうしたヘッジファンドや投資銀行の自己勘定部門が強引に収益の獲得に走り、米国不動産市場に莫大な資金を供給する役割を果たしたために起こりました。結果としてバブルを発生させ、やがてそのバブルがはじけて金融システムを揺るがすような危機を招いてしまいました。

 

そのため、リーマン・ショックの原因のひとつはヘッジファンドであるとして、米国議会が「ボルカー・ルール」と呼ばれる規制案を可決。2015年には、米国の投資銀行や商業銀行の投資活動に一定の歯止めをかけることが決まり、銀行が傘下にヘッジファンドを持つことを制限したり、プライム・ブローカーなどを通して資金供給することも制限を受けることが決まっています。

 

影響力の大きさゆえに様々な面を持つヘッジファンドですが、いずれにしても一般の投資家に大きく誤解されていることは事実です。これまで再三述べてきたように、ヘッジファンドはリスクをコントロール(回避)しながら積極的に利益を追求していくために、市場に流動性を提供し、適正な市場価格にマーケットが戻ることを速めている存在といえます。ただし、その性格上、どうしても市場の値動きを増幅してしまう傾向があり、市場価格が乱高下してしまうひとつの原因を作っていることは否定できないでしょう。

 

本連載は、2014年4月30日刊行の書籍『ヘッジファンド×海外不動産で組む 鉄壁の資産防衛ポートフォリオ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の記載の内容は情報の提供および学習を目的としたものであり、本連載を用いた運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。また、本連載の内容に関して運用した結果については、著者およびヘッジファンド証券株式会社、株式会社幻冬舎メディアコンサルティング、合同会社幻冬舎ゴールドオンラインはいかなる責任も負いかねます。また、本書に記載されている情報は2014 年4 月現在のものであり、今後変更されることがあります。

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ヘッジファンド証券株式会社 代表取締役

1979 年(昭和54 年)6 月、福島県伊達市生まれ。2002年(平成14 年)3 月に立教大学社会学部卒業後、KOBE証券(現インヴァスト証券)入社。主に中堅企業のオーナーなど富裕層をターゲットとした営業を展開。2009年(平成21 年)に独立後、投資事業組合を通じたヘッジファンド投資への募集を開始。2010 年(平成22 年)にUGS アセットマネジメント株式会社の代表取締役に就任し、富裕層に対するヘッジファンドの営業基盤を確立する。2013 年(平成25 年)8 月から現職。

著者紹介

ヘッジファンド×海外不動産で組む  鉄壁の資産防衛ポートフォリオ

ヘッジファンド×海外不動産で組む 鉄壁の資産防衛ポートフォリオ

植頭 隆道

幻冬舎メディアコンサルティング

相場の影響を最小限に抑え、どんなときでも一定の利益を狙える安定運用型のヘッジファンド。 所得税・地方税の節税効果が高く、投資効率も良い米国不動産。 本書ではこの2つを解説すると共に、投資家の属性別・将来のシナリオ…

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