「専門家だから安心」とは限らない成年後見制度の実態

前回は、親族後見人による「成年後見制度」を悪用した横領等の状況について解説しました。今回は、専門職後見人による横領等の状況を見ていきます。

親族だけでなく専門職の後見人による横領件数も増加

前回説明したように、親族後見人による横領事件が増加してきたことから、各地の家裁は親族による着服を防ぐための措置を講じ始めました。親族ではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門職や社会福祉協議会、市民後見人などの第三者を成年後見人に選ぶ傾向を強めるようになっていったのです。

 

ところが、親族から専門家に成年後見人がシフトするのに伴って、今度は専門職の後見人による横領の件数が増えるようになっていったのです。以下、少し長くなりますが、2015年7月23日の毎日新聞のホームページに掲載されたニュースから引用してご紹介します。

 

「弁護士や司法書士ら、親族以外の専門職が成年後見人に選任される割合は増加傾向にあり、弁護士の選任は2014年は全体の約20%に上った。家裁は後見人から定期的に提出される報告書を通じて業務をチェックしている。12年には、精神疾患のある女性の後見人をしていた東京弁護士会の元副会長が期限までに報告書を提出しなかったため調査したところ、女性の財産に多額の使途不明金が発覚。元副会長が着服を認めたため後見人を解任した。元副会長は翌13年、東京地裁に業務上横領容疑で逮捕され、着服額は総額約4200万円に上った。

 

弁護士による同様の問題は各地で繰り返されている。最高裁によると、弁護士や司法書士ら専門職による着服などの不正は、調査を始めた10年6月から14年末までに全国で少なくとも62件、約11億2000万円に上る。今年も認知症女性の後見人をしていた東京の元弁護士が逮捕され、1億円以上を着服した疑いがもたれている」

専門家一人の事務所ではチェック機能がずさんなことも

もちろん多くの弁護士や司法書士などの専門職後見人は、与えられた職務を真面目に遂行しています。にも拘らず、一部でこのような問題が発生するということは、後見人を選ぶシステムに問題があるのではないでしょうか。というのも、法定後見人を選任する権限はあくまでも家庭裁判所にあり、後見人を頼みたい側には、人を選ぶ権利が与えられていないのです。

 

筆者が見たところ、横領問題が起こるのは、弁護士がその人一人しかいないという、小さな事務所に集中しているようです。複数の弁護士がいる、ある程度の規模の事務所ですと、経理の担当者がいて、自分の事務所のお金と預かり金をきっちりと分けて管理しています。また、弁護士同士でお互いにチェックし合う体制がつくられているため、横領を未然に防ぐことができます。

 

ところが弁護士が自分一人でやっているところだと、チェック機能が働かず、事務所のお金も預かり金も全部ごっちゃにしているうちに、結果として使い込んでしまった、ということになりやすいのではないでしょうか。

 

また、弁護士については、法律の専門家で信頼性が高いということで、従来は後見監督人をつけられることがなかったのも一因となっているかもしれません。ダークな部分が助長されやすい環境で、起こるべくして起こったということがいえるのではないでしょうか。

本連載は、2015年11月25日刊行の書籍『老後の財産は「任意後見」で守りなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載老後の財産を守るための「任意後見」活用術

南青山 M’s 法律会計事務所 代表社員 弁護士/公認会計士

弁護士・公認会計士。南青山M’s法律会計事務所代表。芦屋大学経営教育学部客員教授。
1973年愛媛県生まれ。1995年一橋大学経済学部卒業。2006年成蹊大学にて法務博士号取得。1995年監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社、上場企業の監査、M&A等に携わる。その後、会計事務所、法律事務所勤務等を経て2009年に南青山M’s法律会計事務所を設立。個人、企業にとって身近な法律問題はもちろん、税務問題、会計問題、それらが絡み合う複雑な問題についても、冷静に問題を分析し、依頼者にとって最も利益となる問題の解決方法を提案、実践している。著書に『ドロ沼相続の出口』(幻冬舎)。

著者紹介

老後の財産は 「任意後見」で守りなさい

老後の財産は 「任意後見」で守りなさい

眞鍋 淳也

幻冬舎メディアコンサルティング

昨今、高齢者を狙った詐欺や「争続」が新聞やテレビなどのメディアで盛んに取り沙汰され、老後の財産管理に対する不安が高まっています。高齢になると判断能力が低下してしまい、望まないかたちで財産を失ってしまうケースは多…

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