なぜ資産の「インフレヘッジ」が必要なのか?

投資にはリスクがありますが、インフレが進めば資産の価値は目減りしてしまいます。今回は、インフレに対するリスクヘッジの必要性について見ていきます。

人間はリスクをとりたくない生き物!?

多くの日本人は、どんなに預金金利が低くても、おとなしく銀行預金で満足するように教育されています。なぜならば、下手に儲けようと「ハイリスク・ハイリターン」を狙って、損をしてしまうのが怖いからです。

 

2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマン氏と心理学者のエイモス・トベルスキー氏が、1979年に提唱した認知科学に、プロスペクト理論というものがあります。これは人間が利益と損失をどのように評価するかを実験によって確かめたものです。

 

例えば、次のような二つの条件を提示された場合、あなたはどちらを選択するでしょうか。


A 無条件で100万円を手に入れる。
B コインを投げ、表なら200万円もらえるが、裏なら何ももらえない。

 

どちらも期待値は100万円で変わらないのですが、実験では、ほとんどの人が1の選択肢を選びました。なぜならば、人間は利益よりも損失に敏感に反応する生き物だからです。つまり確定した100万円があるときに(Aの選択肢)、その100万円を失うリスクを冒してまでも200万円を狙うのは、本能に反しているようなのです。

 

100万円を手に入れる喜びに対して、200万円を手に入れられるかもしれない可能性は2倍の価値を持たないので、Bを選ぶ人が少なくなるとも考えられています。金額を1000万円と2000万円に変更すると、さらにBを選ぶ人は少なくなることでしょう。

 

人間は損をしたくないし、リスクをとりたくない生き物です。ですから逆に、リスクを背負って借金して起業する人や、夢を追いかけて安定した生活を捨てる人のドキュメントが、稀少価値のあるストーリーとして称揚されるわけです。ベンチャー起業家が大金持ちのお坊ちゃんだったとしたら、あるいはプロ野球選手が全員終身雇用のサラリーマンだったとしたら、その魅力は半減してしまうことでしょう。

 

さて、リスクの嫌いな人々に、あえてリスクを背負って「投資」しろ、なんてことを言うつもりはありません。0.1%であろうが、0.01%であろうが、元本の保証された銀行預金がいちばんいいというのも、一つの卓見です。

 

しかし、現在の日本には、お金を銀行預金として預けておく、あるいは現金として自宅に保管しておくことそのものがリスクとなるような事態が忍び寄ってきています。それが、インフレリスクです。

インフレが進めば資産の実質的な価値は減少していく

そもそも人間が生きていくのに、リスクがゼロということはありません。特別の野心もなく普通に生きている人でも、常に交通事故や病気などによる死や負傷の危険にさらされています。

 

一般に、ハイリスクはハイリターンで、ローリスクはローリターンといわれていますが、人が生きている限りノーリスクになることはなく、事故や病気や解雇といった潜在的なリスクは常に存在しています。その意味では、必ずしもハイリターンを狙った人だけがハイリスクなわけではないし、ローリターン狙いの人がローリスクなわけでもないともいえるでしょう。

 

リスクに備えて、回避策を準備することをリスクヘッジといいます。例えば、病気や怪我で働けなくなる場合に備えて保険に加入することは、典型的なリスクヘッジです。

 

筆者があなたに勧めたいのは、このリスクヘッジです。特に、今後、ほぼ確実に予想されるインフレリスクに対しては、資産のインフレヘッジ(インフレリスクのヘッジ)が必要であると考えています。

 

現在、アベノミクスがかかげるインフレ目標は2%です。ということは、少なくとも年利2%以上の利率で預金額を増やしていかなければ、資産の実質的な価値が減少してしまいます。しかし、現在の日本で、年利2%以上の預金商品など本当にあるのでしょうか。

 

結論を先にいえば、元本保証の円預金で探す限りは、恐らくありません。円預金はほぼノーリスクの金融商品なので、利率が低く抑えられているからです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長

学習院大学経済学部卒業後、1985年に野村證券投資信託委託入社。日本株式運用、総合企画、秘書室勤務を経て野村アセット・マネジメント・シンガポール、野村ブラックロックで幅広い資産運用ビジネスを経験。その後、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズのディレクターを経て、2002年5月に投資信託本部長としてAIG 投信投資顧問(現 パインブリッジ・インベストメンツ)入社、その後、常務執行役員投資信託本部長を経て、2011年6月から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

パインブリッジ・インベストメンツ株式会社 執行役員 グ ローバル・マルチアセット運用部長

慶應義塾大学商学部卒業後、1987 年に三井生命保険入社。1993年より同社英国投資顧問現地法人に勤務し、ロンドン・シティからグローバルな株式・債券投資を行う。その後、スカンディア生命保険、三井住友海上シティインシュアランス生命保険を経て、2004年にAIG 投信投資顧問入社。その後、執行役員 運用本部長兼グローバル・バランス運用部長を経て、2013 年1 月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員およびCFA 協会認定証券アナリスト。

著者紹介

連載インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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