「ミュージション」は、過去の成功・失敗から得た教訓と、入居者の声を生かして現在のかたちになりました。今回は、そうした教訓などについて見ていきます。

貴重な経験となった建設時の「2つの失敗」とは?

現在のミュージションは、過去の成功・失敗から得た教訓と、入居者のみなさんの声を活かして作られたものです。

 

ミュージションの歴史が始まったのは1987年、ミュージション成増からでした。ミュージション成増は、総戸数29部屋のワンルームマンションの地下に、5戸のスタジオを設けるという当時としては斬新なものでしたが、前代未聞の挑戦だったため、2つの失敗を犯してしまいました。

 

①防音に関する技術的な失敗
地面に接する半地下にスタジオを作ることで振動を吸収するはずだったが、配管などを通じて上の階に音が伝わってしまった。
②マーケティング戦略の失敗
賃料相場の見当がつかず、相場並みの価格で入居者を募集したところ、ロック好きの苦学生という入居者が増え、管理に苦労しただけでなく、投資としても満足のいく結果が得られなかった。

 

この中でもスタジオからの音漏れは、大きなダメージでした。その後、様々な対策を講じても音漏れが解消されることはなく、地下スタジオは結局、倉庫に転用されました。現在、ミュージション成増はミュージションではなく、一般的な賃貸マンションとして利用されています。しかし、この悔しい失敗は貴重な経験となりました。

「余分な設備」が投資効率を下げることに・・・

ミュージション成増の失敗を教訓に、次のミュージション川越を作る際には、細心の注意を払いました。まず考えたのは、ミュージション成増ではなぜ、地下スタジオを設けたにもかかわらず、家賃がアップできなかったのか? ということです。

 

そしてたどりついた答えは、ミュージションを謳いながら、楽器を弾ける場所を地下スタジオに限定したこと、つまり、マンション全体を遮音にするというチャレンジから逃げたことがよくなかったのではないかということでした。

 

そこで、ミュージション川越は、すべての部屋で楽器が弾けるマンション、それも単なる「楽器可マンション」ではなく、「好きなだけ音楽を楽しめるマンション」を目指すことにしました。

 

収益面については、バンドマンが対象だったミュージション成増からターゲットを変更し、クラシック系の音楽家やサラリーマンの音楽愛好家など、ある程度の家賃を払える人に選ばれるマンションを作ることで、利回りのアップを目指しました。

 

これらの軸に基づき、ミュージション川越は、2000年に無事に完成しました。結果はといえば、室内で楽器が演奏できる高い防音レベルが実現し、賃料もアップしたという面では成功だったのですが、投資効率は上がりませんでした。その理由は、上がった賃料以上に工事にコストをかけてしまったからです。

 

実は、ミュージション川越では、居住スペースに大きなゆとりのあるスタジオタイプを加えたり、共用廊下に大きな吹き抜け空間を作ったりと、今思えば「音楽に関係のない過剰な建築的コスト」をかけすぎたところがありました。

 

その経験を活かして、次のミュージション志木では、音楽に関係ない部分の過剰な設備は削ったものの、こちらもメゾネットタイプの部屋を作ったり、バスルームをガラス張りにしたりと、自分なりに工夫を凝らした部屋ほど㎡賃料効率がダウンし全体の足を引っ張るという、苦い結果となりました。

 

入居者の反応は正直です。オシャレだと思ったガラス張りのバスとトイレは女性入居者には不評でしたし、賃料アップにつながると考えていたロフトも、住んでいる人に聞くと使われていないということがありました。反対に、入居者から届く声は、「音楽CDを制作する機械をつなぐための200ボルトの電源を使えるコンセントを設置したい」など、音楽に直結したものばかりでした。

 

つまり、ミュージションの入居者は、音楽以外の余分な設備には価値を感じないのです。ミュージション登戸とミュージション野方は、この入居者の声を活かし、音楽に特化したシンプルな1Kタイプで構成してあります。

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    本連載は、2011年2月28日刊行の書籍『近隣物件よりも高い賃料で長く儲ける満室賃貸革命』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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