前回は、納税に対して経営者が持つべき意識と、節税ばかり追求することの危険性について説明しました。今回は、課税が納得できない場合に行う「不服申立て」について、成功事例を交えながら見ていきます。

制度改正で使いやすくなった「国税不服申立制度」

今回は、「国税不服申立制度」についてお話ししておきます。税務署の課税処分に納得できないときや、納税した額に不服があるときは、国に対して異議を唱え、不服申立てをすることができます。国税側の誤りが認められれば、課税額が修正されたり、納め過ぎた税金が戻ってきたりします。

 

ただし、「いざとなったら不服申立てをすればいい」という考え方ではなく、企業も税理士も不服申立てをしなくて済むように日頃から取り組む姿勢が大事です。誠意をもって説明すれば税務当局もやみくもに不当な課税はしないものです。

 

【不服申立制度】

 

国税に関する法律に基づき税務署長等が行った更正・決定などの課税処分、差押えなどの滞納処分等に不服があるときは、その処分の取消しや変更を求める不服申立てができます。

 

不服申立ての手順としては、3段階あります。

 

①まず、処分を行った税務署長等に「再調査の請求」を行います。

請求ができる期限は、処分の通知を受けた日の翌日から2カ月以内です(青色申告書における更正に不服があるときなど、再調査の請求を経ずに直接、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる例外もあります)。

 

再調査による見直しが行われ、処分が正しかったかどうかの判断が下されます。

 

②結果を受けて、なお不服があるときは、国税不服審判所長に「審査請求」を行います。

審査請求の期限は、従来は通知を受けた日の翌日から1カ月以内でしたが、平成26年6月の改正により「3カ月以内」に延長されました。また、同じく改正によって、納税者の選択で①を経ずに直接、②を行うことも可能になりました。

 

審査請求を受けた国税不服審判所で調査や審理が行われ、裁決が下されます。

 

③この裁決にも不服があるときは、さらに裁判所に訴えの提起をします。

これの期限は、通知を受けた日の翌日から6カ月以内です。

 

国税に関する不服申立制度が一部改正されたことで、適正かつスムーズに審査が行われるようになりました。納税者の側からすれば、不服申立てをしやすくなったといえます。

 

[図表]不服申立ての流れ

税務当局に勝訴し、税金を取り戻した実例とは?

この不服申立てによって見事、払い過ぎた税金を取り戻した例が当方にもあります。

 

当初は他の税理士が関与していた会社なのですが、社長が従業員に資金繰りの厳しさを教えるために、正規の帳簿以外に別の帳簿を作っていたケースがありました。従業員に見せるほうの帳簿にはわざと余剰資金を記載せず、あたかも経営状態が厳しいように書いてあったのです。このことが二重帳簿とみなされて、二重課税を受けました。

 

二重課税を受けた時点で前任の税理士が降り、私に依頼が来ました。改めて帳簿を見直したところ、売上自体は正しく記載・申告されており、明らかに過大な課税であることが確認できました。税務署長あてに異議申立て(再調査の請求)をすると、難なくこちらの言い分を認めてもらうことができ、無事に納め過ぎた税金を還付してもらうことができました。

 

「この課税はおかしいのではないか」「税務署の処分にどうも納得がいかない」という場合は、躊躇せずに不服申立てをすべきだと思います。ただし、税務や会計の素人だけで事に当たるのはハードルが高いと思います。税務職員は「通達」にもとづいたマニュアル通りの処理をするので、どうしても納税者側には反論が難しく、不利な判断になってしまうことが多いためです。

 

最終的には過去の裁判の判例が決め手となります。その点、職業会計人であれば税務訴訟判例を参考にしながら納税者に有利な判断になるよう力添えをしてくれます。必要な場面では、相応しい相手に相談をし、バックアップをしてもらってください。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『低成長時代を生き抜く中小企業経営9カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    真下 和男

    幻冬舎メディアコンサルティング

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