アメリカとイギリスにおけるリコール制度の現状

スイスを起源とするリコール制度の歴史は古く、すでに数多くの民主主義国家で実施されています。今回は、アメリカでの現状や、議員スキャンダルが発端となって導入されたイギリスのリコール法についてご紹介します。

リコール制度のはじまりと広がり

リコール制度は正9世紀後半にスイスで生み出され、その後すぐに、米国でも実施された。個々の議員に対するリコール制度は、比例代表制よりも小選挙区制に適していることが2008年の研究で言われている。

 

米国では、1903年にロサンゼルス市議会でリコールが最初に実施された。その後、1908年に米国では初めて、ミシガン州とオレゴン州の州議会議員に対するリコール制度が適応された。今日、19州とワシントンD.C.での州議会議員に対する、また34州での地方議員に対するリコールが許められている。なお米国憲法においては、連邦議会に選出された議員のリコールは認められてない。

 

統計分析によると、米国では市議会や、教育委員会といったレベルにおいて、リコール制度がより頻繁に用いられ、成功を収めている。リコール運動の要因はそれぞれ州によって異なるが、とりわけ政治的な理由が多い。リコール請求に対して、特定の理由を要件に定めているのは8つの州だけである。

 

20世紀後半には、リコールの考え方は途上国、とりわけラテンアメリカにおいて浸透していった。いくつかの国では、議会民主主義と直接民主主義の両方を兼ね備える憲法の制定が試みられ、それによって主に地方自治議会でのリコール請求権が認められることとなった。

スキャンダルが発端となったイギリスのリコール制度

英国では、2010年の保守党と自民党の連立政権合意のなかで、「リコール権」を定める法律を国会へ提出することが約束された 。この発端となったのは、2009年の議員経費に関するスキャンダルである。このスキャンダルで、国会議員による議員経費の不正請求が、政党を越えてまん延していることが明らかになった。数名の議員が辞任したにも関わらず、議員に対する国民の激しい怒りは収まる気配がなかった。

 

2014年9月にリコール法案が提出され、当時のNick Clegg副首相 は「本法案は、国会議員に対してのリコール制度を構築し、高い透明性を備え、堅固で、公平な法案です。明確な行動規範を守らないものに責任を与え、同時に、職務を行い、必要な局面で難しい判断を下すための自由を議員に与えます。本案はその公平なバランスをもたらすものなのです」と語った。

 

一部の批判のなかで、この法案は、米国やその他の国々で用いられているリコール制度の「妥協バージョン」と呼ばれ、「かなり限定された状況でしか、国会議員の免職は行われない」と指摘された。幾度も修正を重ねた結果、法案は2015年3月26日に国王の裁可を得て、法令として発効された 。現在、リコール法は実際にその効力を持ち、それによって国会議員は「リコール」されることが認められ、重大な違法行為を行なった場合には、国民投票にさらされることになる。

 

法令では、議員が懲役刑に科せられたか、または最低10日間に渡って議会から停職処分を受けた際にリコール請求を行なうことができる。もし、このどちらかが起こった場合は、まず議長がリコール請願職員(a petition officer) に喚起を促し、順を追って、その議員が選出された選挙区の有権者へ知らされる。請願は開示され、8週間に渡りリコール請求のための署名が集められる。もし、10%を越える有権者が署名すれば、議員の欠員が正式に公示され、次に補欠選挙がおこなわれるという手順だ。その際、免職された議員が再び出馬する可能性もある。

 

次は、インドにおけるアドボカシー活動とリコール制度についてご説明します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Can the ‘Right to Recall’ empower lankan Voters?」を、翻訳・編集したものです。

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『ECHELON(エシュロン)』は、スリランカの三大ビジネス誌のひとつ。著名な経営者・ビジネスパーソンのインタビュー記事から、同国の金融・経済・投資・不動産などの最新事情、ラグジュアリーなアイテムやライフスタイル等の記事を幅広く掲載。経営者層やハイクラスなビジネスパーソンなど、同国の物的・知的富裕層を多数読者に抱える。(写真はチェアマンのChanna De Silva氏)

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