前回は、ホテル・旅館が行っている「感染症対策」の具体例を紹介しました。今回は、民泊に潜む「テロ」のリスクについて説明します。

現状の民泊では、宿泊客の身元確認が不十分

”ヤミ民泊”のリスクとしては、前回取り上げた衛生管理上の懸念に加えて、「テロの温床となる危険が大きい」という問題も指摘されています。前述のように、ホテル・旅館とは異なり、現状の民泊では宿泊客の身元確認が不十分なため、テロリストが潜伏しやすいと考えられているのです。

 

グローバル化が進む中で、かつては対岸の火事のように感じられていた国際テロの脅威が、多くの日本人にとって身近なものとなっています。実際、ここ数年間だけでも、テロ行為によって日本人が死傷する事件が、以下のように相次いで起こっています(公安調査庁のホームページより)。

 

●2012年8月20日

シリア・アレッポ市で、反体制派組織「自由シリア軍」(FSA)に同行し、取材を行っていた邦人1人が銃撃に巻き込まれ死亡

 

●2013年1月16日

「血判部隊」とされる武装集団が、アルジェリア・ティガントゥリン地区にある天然ガス関連施設を襲撃し、作業員などを人質にして立て籠もり。アルジェリア軍部隊が1月19日までに制圧したが、邦人10人を含む多数が死亡

 

●2015年1月24日

シリアにおける邦人殺害テロ事件。「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)が、拘束していた邦人2人のうちの1人を殺害したとみられる映像を発出

 

●2015年2月1日

シリアにおける邦人殺害テロ事件。「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)が、拘束していた邦人2人のうち残る1人を殺害したとみられる映像を発出

 

これらはいずれも国外で日本人がテロに遭遇したケースですが、今後は国内でもテロの被害に巻き込まれる可能性が小さくないと考えられています。国際テロについて特集した2016年版の「警察白書」では、2015年のシリアにおける人質殺害事件の際などに、IS(イスラム国)により日本や日本人がターゲットとして名指しされたことに触れ、「我が国に対するテロの脅威は現実のものとなっている」と警告を発しています。

このまま「ヤミ民泊」を放置してしまうと・・・

さらに、同白書では、インターネットやSNS(交流サイト)を通じて過激思想に触れたIS支持者が日本にもいることや、自国でテロを実行する「ホームグロウンテロリスト」の危険性、2年前にISの戦闘員になるためシリアへの渡航を図った大学生がいたことにも触れつつ、民泊がテロリストに利用される危険性があることを、次のように指摘しています。

 

「いわゆる『民泊サービス』についても、テロリストを始めとする犯罪者の潜伏場所等として利用されるおそれがあることから、政府において行われている『民泊サービス』の在り方に関する検討に警察庁も参画している。」

 

実際、諸外国では民泊がテロに利用されたと思われる例も現れています。たとえば、2015年11月に発生したパリ同時多発テロでは、その主犯格が、身元申告が求められるホテルを避け、知人を介してアパートに民泊していたとも報道されています。

 

日本でも今のまま”ヤミ民泊”を放置していれば、同様の事態は十分に起こり得ると
いってよいでしょう。

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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