前回は、宿泊業界を悩ませる「トコジラミ」の問題を説明しました。今回は、ヤミ民泊の大きな問題、「輸入感染症」の拡大リスクについて見ていきます。

国内に存在しない感染症を、旅行客が持ち込む可能性も

公衆衛生面における”ヤミ民泊”の重大なリスクとしては、「輸入感染症の拡大リスク」もあげられます。

 

輸入感染症とは国内に存在しない、もしくはほとんど見られなくなった感染症であり、つまり旅行客等によって国外から持ち込まれた伝染病を意味します。世界各国には、様々な伝染病が存在します。その中には、感染者の心身に重篤な障害をもたらしたり、命を奪うものも少なくありません。

急増する海外観光客、リスクは最大限に高まっている

記憶に新しいところでは、エボラ出血熱の例があげられるでしょう。エボラ出血熱はエボラウイルスによって引き起こされる急性の熱性疾患で、病状が深刻化すると消化管に出血が生じるなどして死に至る可能性が極めて高くなります。

 

2014年には、西アフリカのギニアやリベリア、シエラレオネを中心に流行し、世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を発しました。日本でも、ギニアから帰国した男性が発熱などを訴えた例など、エボラ出血熱を疑われ検査を受けるケースが複数見られました(いずれも検査の結果は陰性)。

 

幸い、エボラ出血熱については日本国内への伝染を防ぐことができましたが、過去には輸入感染症が見つかった例がいくつもあり、たとえば、2014年にはデング熱の国内感染が約70年ぶりに確認されています。デング熱は、蚊が媒介するデングウイルスが身体に入り込むことによって発症し、高熱、頭痛、筋肉痛などが引き起こされ、重症化すると鼻血などの出血も現れます。

 

このように、いつ海外から危険な伝染病が持ち込まれても全く不思議ではありません。ことに、前述のように海外観光客が急増している今の情勢では、輸入感染症拡大のリスクが最大限に高まっているといっても過言ではないでしょう。

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    本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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