
前回は、「クラウド会計ソフト」の快適な運用に欠かせない事前準備について説明しました。今回は、会社の会計インフラ構築の際に「公認会計士」のサポートを受けるメリットを見ていきましょう。
広範な業務の取り扱いが認められている「公認会計士」
会計インフラの構築をスムーズに進めていくためには、経理だけではなく、人事、総務も含めたバックヤード全体への目配りも求められることになります。そのような観点からも、公認会計士のサポートを得ることは非常に有益といえます。
一般にはあまり知られていないかもしれませんが、公認会計士の資格を取得すると、税理士、行政書士の資格も認められ、さらに公認会計士の業務に付随して社会保険労務士法上に掲げられている事務と司法書士の事務を業として行うことも可能となります。
では、なぜ、公認会計士にはこうした広範な業務を取り扱うことが認められているのでしょうか。
それは、必要に応じて、税金や登記、人事労務、給与計算、社会保険等の業務も処理することができなければ、企業会計の仕事を十全な形で全うすることは難しいと考えられているからなのです。
また、実際にも、公認会計士が企業経営者から会計インフラの構築を依頼された場合には、バックヤードに関する情報を広く集める作業から着手するのが一般的となっています。
ちなみに、アメリカなどの外資系企業では、バックヤード全体について精通しその統括を行う「コントローラー」と呼ばれる職種があります。日本における公認会計士は、そのようなコントローラーと同様の広い視点を持って会計・経理業務に取り組む役割を担っているといえるかもしれません。
費やしたコスト以上の「安心感・満足感」が得られる!?
ここまで見てきたように、会計インフラを自社ビジネスに最もマッチした形で構築するためには、会計の専門家のサポートを得ることがベストの手段となります。
しかし、専門家に依頼するのには費用がかかります。そうした専門家コストの負担を嫌って、「独力でできることは自分でやろう」と思う人もなかにはいるかもしれません。
例えば、世の中には、趣味で日曜大工をかじった程度の腕前なのに、「大工に頼むお金がもったいない」と独力で家を建ててしまうような人もいます。いかにも素人の作りで傍から見ると危なっかしさを感じるような出来ばえであっても、造った本人だけが住むつもりであれば「もし大地震が起こって家が崩れたとしても被害にあうのは自分だけだ。だったら何も恐れることはない」などと構えていられるかもしれません。
しかし、親や妻、子どもとともに住むのであれば、どうでしょうか。家族の命や安全を考えるならば、やはり「プロの大工に頼んで造ってもらうほうが不安がない」と思うはずです。
会計インフラについても同じことがいえるでしょう。会計インフラは会社を支える役割を果たすもの、究極的には会社から収入を得る経営者と従業員、そしてそれぞれの家族の生活を支えるものです。
だとすれば、やはり、心から安心できるものを作ることが賢明な選択となるはずです。一度作ったインフラは、半永久的に使うことが可能です。会計の専門家がサポートしたリスクのないインフラを使い続けることにより、おそらく費やしたコスト以上の安心感と満足感を得ることができるに違いありません。
そしてさらには、ランニングコストの点でも専門家に依頼した場合のほうがメリットは大きいでしょう。会計インフラを20年、30年、40年・・・と使い続けたとき、独力で作り上げた場合に比べ、その維持・管理にかかる総費用についておそらく10倍以上の差が生まれるはずです。