自己破産を「おそれるべきではない」理由とは?

経営者の中には自己破産することを極端におそれる人がいますが、何よりも大事なことは経営の「再建」です。今回は、その観点から「自己破産」について改めて考えています。

会社が「再建」できなければ意味がない

本連載では別会社を使った事業再生スキームの戦略の具体的な進め方や、それに関わる有益な国の制度などについて確認してきました。このスキームを実際に行う場合に、個人的に注意を促しておきたい点について、筆者自身の実体験をもとに、二、三指摘しておきましょう。

 

まず第一に、会社が破産手続きを行う場合、通常、会社の債務について連帯保証をしている者も破産の申し立てを行うことを、つまりは自己破産することを余儀なくされるでしょう。実際、筆者もY不動産が破産した翌年に自身の破産手続きを行いました。

 

経営者の中には、自己破産することを極端におそれる人がいます。そのために、事業を立て直す手段として複数の選択肢があるような場合に、できるだけ自己破産をせずに済む方法を選択しようとする人がいますが、それは本末転倒な考えというほかありません。

 

何よりも大事なことは、経営再建のはずであり、そのためにベストの解決策を見つけ、誠心誠意、事業の再生に取り組むことのはずです。その結果、自らが破産することになったとしても、それは経営者としていた仕方のないこと、従容として受け入れるべき運命というべきではないでしょうか。

 

よくよく考えてほしいのですが、仮に自己破産せずに済んだとしても、会社が再建できないのであれば何の意味もないのではないでしょうか。破産したくないという自己保身の思いが先に立って誤った判断をし、万が一、事業を立て直せないまま会社を倒産させてしまったら、もはや取り返しがつきません。しかも、そうなってしまったら結局は自己破産せざるを得なくなるはずです。まさにこれ以上はない最悪の結果というべきでしょう。

免責を得ることですべての債務を免れることができる

そもそも、筆者自身の経験からいえば、自己破産は決しておそれるべきことではありません。それどころか、会社債務の連帯保証人として、多額の負債を抱えているような人にとっては、むしろ前向きに検討すべき選択肢の一つといえるでしょう。まず、自己破産すれば、免責を得ることによって原則として抱えていたすべての債務を免れることができます。

 

つまりは、長い間苦しめられてきた借金から解放されることになるのです。この免責については、その意味を正しく理解していない人も少なくないようなので、詳しく解説しておきましょう。

 

免責とは、破産手続きによる配当によって弁済されなかった破産者の債務について、その責任を一般的に免除する制度です。

 

破産者は、破産手続き開始の申し立ての日から破産手続き開始決定の確定の日以後1月を経過する日までの間に、裁判所に対し免責許可の申し立てができます(なお、自己の責任ではない理由により期間内に申し立てができなかった場合には、その理由の消滅後1月以内に限り、改めて申し立てができます)。

 

そして、免責不許可事由がない限りは、裁判所は免責を許可する決定を行います。免責不許可事由とは、ギャンブルによって多額の借金をつくったなど、不誠実な破産者であることを示す事情のことです。免責不許可事由の種類は様々ですが、実際に問題になることが多いものを挙げれば以下の通りです。


(1)浪費やギャンブルなどにより多額の借金をしてしまった場合
(2)財産を壊したり、隠したり、他人に勝手に贈与したりしたような場合
(3)破産申し立てをする前の1年間に、住所、氏名、年齢、年収等の経済的な信用に関わる情報について嘘をついて、借金をしたり、クレジットカードで買物をしたりしたような場合
(4)ローンやクレジットカードで商品を買い、その商品を非常に安い値段で転売してお金に換えた場合
(5)破産の申し立てをした日から数えて7年以内に免責を受けたことがある場合
(6)裁判所や破産管財人の行う調査に協力しなかった場合

 

なお、これらの不許可事由のいずれかに該当する場合でも、裁判所は、破産手続き開始決定に至った経緯その他一切の事情などを考慮して免責の許可を相当と認めるときは、免責許可の決定ができます(いわゆる裁量免責)。

本連載は、2014年10月25日刊行の書籍『引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載引き継いだ赤字企業の「再生」術

株式会社スペース 代表取締役兼CEO

1954年東京都生まれ。三井不動産販売退職後、祖父が大正12年に中野で創業した「山一不動産」の3代目に就任。バブル崩壊とともに300億円の負債を背負いながら、事業再生に奔走する。1996年「スペース」を創設し、「山一不動産」の営業権譲渡を行うことで、先代からの基盤を守り、社員を切り捨てることなく事業再生させた。現在はこの時の自身の経験を元に、同じような悩みを抱える中小企業経営者の相談に乗り、専門家チームのメンバーとして、ボランティアでアドバイザーも務めている。中野区観光協会準備会メンバー。一般社団法人中野区観光協会監事。

著者紹介

引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法

引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法

高山 義章

幻冬舎MC

中小企業の資金繰り悪化の対応策として時限立法として成立した法案、「金融円滑化法」が終了した。 現在のところ、これにより目立った動きはないものの、この先いつ債権者が債権処理に動き出してもおかしくはない。そうなれば…

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