「事業承継税制の特例」の具体的な改正内容は?

平成30年2月、中小企業庁より「経営承継円滑化法」を一部改正する旨の内容をまとめた「平成30年2月中小企業庁財務課中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令案について」が発表されました。今回は、「事業承継税制の特例」の具体的な改正内容を取り上げます。

適用対象者が拡大し、承継パターンが多様化

●納税猶予の対象株式数の制限がなくなりました。

●雇用確保要件が大幅に緩和されました。

●適用対象者の拡大により、承継パターンが多様化することになります。

●一定の要件を満たす納税猶予対象株式の譲渡、合併、解散等については納付額の減免措置が講じられます。

●特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者であっても相続時精算課税制度の適用が可能となりました。

 

[図表]事業承継税制の特例制度の変更点

 

創設された納税猶予の特例制度とは?

非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度が創設

 

①特例後継者が、特例認定承継会社の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈により特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡の日等までその納税が猶予されることになりました。

 

(注1)上記の「特例後継者」とは、特例認定承継会社の特例承継計画に記載された、会社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせて当該特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有する者に限る。)であって、同族関係者のうち、会社の議決権を最も多く有する者(計画に記載された後継者が2名又は3名以上の場合には、それぞれ上位2名又は3名の者(総議決権数の10%以上を有する者に限ります。))をいいます。

 

(注2)上記の「特例認定承継会社」とは、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出した会社であって、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項の認定を受けたものをいう。

 

(注3)上記の「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいいます。

 

②特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する非上場株式についても、特例承継期間5年内に贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象とする。

 

③現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定されないこととなりました。ただし、この場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されているものに限る。)を都道府県に提出しなければなりません。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければならない。

 

④経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をするとき、特例認定承継会社が合併により消滅するとき、特例認定承継会社が解散をするとき等には、次のとおり納税猶予税額を免除されます。

 

イ 非上場株式の譲渡若しくは合併の対価の額(譲渡又は合併時の相続税評価額の50%に相当する額が下限です。)又は解散の時における非上場株式の相続税評価額を基に再計算した贈与税額等と譲渡等の前5年間に特例後継者及びその同族関係者に対して支払われた配当及び過大役員給与等に相当する額(「直前配当等の額」。)との合計額を納付することとし、再計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額が当初の納税猶予税額を下回る場合には、その差額が免除されます。

 

ロ 特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をする場合又は特例認定承継会社が合併により消滅する場合(譲渡又は合併の対価の額が当該譲渡又は合併時の相続税評価額の50%に相当する額を下回る場合に限られます。)において、下記ハの適用を受けようとするときには、上記イの再計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額については、担保の提供を条件に、上記イにかかわらず、その納税が猶予されます。

 

ハ 上記ロの場合において、上記ロの譲渡又は合併後2年経過日において、譲渡後の特例認定承継会社又は吸収合併存続会社等の事業が継続しており、かつ、これらの会社において特例認定承継会社の譲渡又は合併時の従業員の半数以上の者が雇用されているときには、実際の譲渡又は合併の対価の額を基に再々計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額を納付することとし、当該再々計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額が上記ロにより納税が猶予されている額を下回る場合には、その差額が免除されます。

 

(注4)上記の「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、次のいずれか(特例認定承継会社が解散をした場合にあっては、ホを除きます。)に該当する場合をいいます。

 

イ 直前の事業年度終了日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字である場合

 

ロ 直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社の売上高が、前年の売上高に比して減少している場合

 

ハ 直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上である場合

 

ニ 特例認定承継会社の事業が属する業種に係る上場会社の株価(直前の事業年度終了日以前1年間の平均)が、その前年1年間の平均より下落している場合

 

ホ 特例後継者が特例認定承継会社における経営を継続しない特段の理由がある場合

 

特例認定承継会社の非上場株式の譲渡等が直前の事業年度終了の日から6月以内に行われたときは上記イからハまでについて、当該譲渡等が同日後1年以内に行われたときは上記ニについて、それぞれ「直前の事業年度終了日」を「直前の事業年度終了の日の1年前の日」とした場合にそれぞれに該当するときについても、「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」に該当することとなります。

 

⑤特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日において20歳以上である者に限る。)であり、かつ、その贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができます。

 

⑥その他の要件等は、現行の事業承継税制と同様です。

 

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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連載平成30年度「事業承継税制」改正のポイント~解説:岸田康雄公認会計士/税理士

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 公認会計士/税理士

一橋大学大学院商学研究科修了(会計学及び経営学修士)。 公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)。日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。
中央青山監査法人(PricewaterhouseCoopers)にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門(不動産投資)、SMBC日興証券企業情報本部(中小企業オーナー向け事業承継コンサルティング業務)、みずほ証券グローバル投資銀行部門(M&Aアドバイザリー業務)に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://jigyohikitsugi.com/

著者紹介

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