事業承継の際に注意したい「自社株の分散」がもたらすリスク

前回は、一般的な自社株対策の「メリット・デメリット」を紹介しました。今回は、事業承継の際に問題となりやすい、「自社株の分散」のリスクを見ていきます。

後継者が決定権を持てないため、経営に支障が・・・

株式で最も厄介なのは分散している場合です。こればかりは、後継者ではなく先代社長が事業承継する前にきっちり整理しておかなければなりません。なぜなら、分散したまま放置しておくと、先代社長が持っていた株式を後継者である息子などが相続することに対して既存株主が反対する決議を出したり、過半数の株式を所有している大株主のオーナー社長から後継者に移すというときに、当事者は議決権を持てないために関係のない少数株主の議決だけで反対意見が通ってしまったりということが起こります。

 

また、後継者も知らないような人たちが株主として株主名簿に載っており、連絡しようとしてもできない場合があります。所在不明株主や名義株の場合です。それでも価値も権利もあるので整理しないことには相続が進みません。

 

このような状態に陥ってしまうと、安定的な会社経営に影を落とすことになります。

 

また、少数株主の存在によって、経営上困ることとして、株式買取請求、株主代表訴訟リスク、M&Aがスムーズにいかない、という3点がありますが、簡単に説明しておきます。

 

少数株主に買取を請求された場合、対応は可能か?

株式買取請求とは、取引相場のない株式を換金するために、少数株主が会社に株式の買取を請求することです。ざっくりとした自社株評価でも構わないので、一度、少数株主が保有している資産価値を試算してみてください。もし、少数株主が買取を請求してきたときに、その株式を買い取るお金は手元にあるでしょうか。

 

手元に現金預金があったとしても、本来、次の商品仕入代金や従業員の給料、経費の支払の準備資金なので、株式の買取は想定していません。そのため、想定外の株式買取請求をされると会社経営に重大な影響を及ぼします。ある日、弁護士から株式買取請求の連絡を受け、買取価格に折り合いがつかなければ、そのまま裁判沙汰ということも現実にはあります。

 

株主代表訴訟とは、株式会社が役員等の責任追及を怠っている場合に、会社に代わって株主が法令違反等に拠って会社に損害を与えた役員等の民事責任を追及し、会社が受けた損害を賠償させることを目的とした訴訟手続のことです。

 

同族経営の中小企業において、会社と役員は一体なので、仮に会社に損害があったとしても役員への責任追及は甘くなりがちです。そのため、ニュースにならないだけで、株主代表訴訟は中小企業に多い訴訟です。この株主代表訴訟は少数株主でもできますし、裁判所への申立手数料が1万3000円と低額で、提起しやすいものです。

 

M&Aも検討したいところですが、事業承継の局面において後継者不在のため自社を第三者に売却せざるを得ないとき、少数株主が株式の買取に応じてくれないために自社の売却が進まないことも起こります。M&Aを進めるためにスクイーズアウトというものがありますが、専門的になるため詳細は割愛します。

 

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連載オーナー社長が知っておきたい「株式承継」の税務・法務

久保公認会計士事務所 代表

2006年、公認会計士試験に合格し、あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)に入所。2011年に退職、経営コンサルティング会社を起業し、税理士法人の経営にも参画。東日本大震災時の中小企業再生支援で後継者育成の重要性に気づき、事業を後継者育成に特化。「3つの資格(公認会計士・税理士・中小企業診断士)」で会計戦略・財務戦略・経営戦略の面から育成支援を行う。

著者紹介

オーナー社長の後継者育成読本

オーナー社長の後継者育成読本

久保 道晴

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者の高齢化が進む中で、後継者不在に悩む企業が増えています。 適任者が見当たらない、子どもに継ぐ意思がないなどの理由で次期社長の目途が立たず、やむなく廃業を選択する経営者も少なくありません。 本書はこうした悩…

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