前回は、後継者への自社株移転の際に留意したい「株式割合」の決定について解説しました。今回は、自社株対策で留意すべき、メリット・デメリットを見ていきます。

「類似業種比準価額方式」における引き下げの方法

自社株対策には種々の方法がありますが、ここでは一般的な自社株対策を列挙して説明し、それぞれのメリットとデメリットを簡潔に説明しておきます。方法は類似業種比準価額方式と純資産価額方式のそれぞれに分けて考えられます。

 

まず、類似業種比準価額方式における引き下げ方法は大別して4つです。前回紹介した計算式に登場する、配当金額、利益金額、純資産価額および類似業種の4つです。

 

まず、配当金額はシンプルに低く抑えることです。ただし、配当をゼロとする無配を続けると、利益金額がマイナスとなったときに先述の比準要素数1の会社に該当し、基本的に類似業種比準方式が適用されないため不利になるケースが多くあります。

 

次に、利益金額についてですが、利益は少ないほうが評価額を抑えることができます。そのため、通常の法人税の節税手法を用います。

 

例えば、含み損のある固定資産を売却して売却損を計上する、固定資産を廃棄して固定資産除却損を計上する、従業員に決算賞与を支給する、生命保険を活用する、経営セーフティ共済へ加入する、人材採用費や広告宣伝費など将来への投資を前倒しする、役員報酬を増額するなどです。事業承継においては社長のリタイアにあわせて役員退職金を計上することが一般的です。

赤字の計上による純資産価額の縮小は好ましくない

続いて、純資産価額についてですが、大幅な赤字を計上すれば、純資産価額を小さくすることはできますが、会社経営においては好ましくありません。そのため、方法としては、会社分割を活用するか、配当を活用します。先ほどの配当金額には経常的な配当に限られるため、記念配当や特別配当などの非経常的な配当で純資産を小さくすることができます。

 

最後に、類似業種についてですが、従業員数100人未満に限り、業種が卸売業か小売・サービス業、それ以外の3つのいずれかによって会社規模の判定が変わります。そのため、会社が複数の業種を営んでおり、メインの業種を類似株価の低い業種に特化することで、株価を低く抑えることができます。また、純資産価額で説明した会社分割を活用することで、会社規模を変更し、評価額を下げることもできます。

オーナー社長の後継者育成読本

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久保 道晴

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者の高齢化が進む中で、後継者不在に悩む企業が増えています。 適任者が見当たらない、子どもに継ぐ意思がないなどの理由で次期社長の目途が立たず、やむなく廃業を選択する経営者も少なくありません。 本書はこうした悩…

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