事業承継は、そう何度も経験することではないため税務や法務を詳しく学ぶよりも、専門家に相談できる程度の知識の修得にとどめ、業務に注力したほうが得策です。そこで本連載では、最低限必要な知識に絞って、株式の承継に係る税務や法務を解説します。

まず留意すべきは、現状での「自社株の評価額」

本連載では、事業承継に関する税務や法務について解説します。ただし先に伝えておきたいのは、承継対策はそう何度も経験することではないので、その対策について詳しく知るために時間をかけるくらいなら専門家に相談できる程度の知識だけを身につけておいて、あとは売上と利益を上げる方向に時間をかけたほうがいいということです。

 

社長の本業は経営であって、税金対策ではありません。税金対策の勉強をどれほどしても、公認会計士や税理士以上に詳しくなることは基本的にありませんし、実際に専門家になる必要もありません。そのため本連載では最低限必要な内容に絞って解説します。

 

まず承継対策で真っ先に考えるべきは株式の承継です。株式が候補者選びに影響してくることは筆者著書『オーナー社長の後継者養成講座』で解説していますが、自社株の承継問題を解決しておかないと、親子承継とはいえスムーズに進まないどころか、経営にまで悪影響が及んでしまうためです。

 

株式の承継で最初に留意すべきは、現状での自社株の評価額です。自社株とは、オーナー社長が所有している会社の発行株式のことを指します。この評価額がわからないと、事前にどういった対策をすべきかが決められません。

株主の様態で変わる「自社株の評価方式」

自社株(取引相場のない株式)を評価するには、まず株主区分を確認します。株主区分とは、会社に同族株主がいるか、株式の取得者は同族株主か否か、株式の取得者の議決権割合の程度によって評価方法が原則的評価方式か配当還元方式に決まります。原則的評価方式には、類似業種比準方式、純資産価額方式、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式の3つがあります。

 

なお、同族株主とは、会社の議決権割合のうち50%超の株式を有している株主とその同族関係者(株主等の親族、株主等の使用人など)のことをいいます。50%超の株主および同族関係者がいない場合は30%以上の株主および同族関係者のことを同族株主といいます。その他の株主は同族株主外の株主です。

 

また、同族株主のなかでも、同族株主の一人およびその配偶者などの近い親族等だけで25%以上の議決権を持っている場合は「中心的な同族株主」といいます。さらに同族株主のいない会社において、株主の一人およびその同族関係者で15%以上の議決権を持っている場合に、いずれかの株主グループに単独で10%以上の議決権を有している株主を中心的な株主といいます。このような株主の様態による分類を図表にまとめたので、参考にしてください。

 

[図表]株主の態様による分類

 
オーナー社長の後継者育成読本

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久保 道晴

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者の高齢化が進む中で、後継者不在に悩む企業が増えています。 適任者が見当たらない、子どもに継ぐ意思がないなどの理由で次期社長の目途が立たず、やむなく廃業を選択する経営者も少なくありません。 本書はこうした悩…

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