医療・介護従事者が心得ておきたい、認知症患者との付き合い方

前回は、患者により良い印象を与える「コミュニケーション」について説明しました。今回は、認知症患者との付き合い方を見ていきます。

スタッフは、病気治療やケアだけが仕事ではない

何度も言いますが、私たちの仕事は、ただ病気を治したりケアをするだけではなく、その人と「お付き合いをする」ことが基本にあります。つまり、こちらから患者さん・利用者さんに指示をするような一方的な関係では「お付き合い」をしているとは言えないわけです。

 

たとえば、認知症の患者さんとのお付き合いもそうです。現実的に認知症患者さんをみていくことは簡単ではありません。どのようにすればいいという正解もない。

 

特に私が認知症患者さんとのお付き合いを始めたばかりのころというのは、まだ認知症という名称すら定まっておらず教科書もなかった。まさに試行錯誤の手探りです。でも、その中で学んだこともたくさんあります。

 

ときには「不安を取り除くための嘘」が必要なことも

「嘘も方便」という言葉がありますが、まさにそうなんです。認知症の方は、さっき話していたこともすぐに忘れてしまう。逆に言えば、今、この瞬間お互いの気持ちがうまく通じればいいという面もあると思ったのです。

 

認知症の方で、何かのはずみでものすごく暴れて怒っている人がいたとします。その方は元代議士の後援会長をされていたという経歴の持ち主。そんな時に「○○さん、そろそろ代議士がいらっしゃいますから開会のごあいさつをお願いしますよ」と言うと「お、そうですか」と、急に平静さを取り戻され「ごあいさつ」が始まり、その後は落ち着かれる。

 

元教授だった方には「先生、そろそろ戻って授業を」と言ったり、「ここはどこなんだ?」と不穏になる方に「そろそろバスが出る時間ですから、もう少し待ちましょう。お茶でもいかがですか」

 

明らかに「嘘」です。通常、私たちは嘘はいけないことだと教わってきました。それはそのとおりですが、この場合は、その嘘で相手の状況を悪くしようとしているわけではありません。むしろ、相手の方が不穏になるのを防いで落ち着くことができたりするので結果的にはいいことにもなる。

 

もちろん「嘘」を奨励するものではなく、ここでもその人との「お付き合い」の中で、そのほうがその人のためにも、みんなのためにもなるということを理解した上で、ご本人とコミュニケーションをするのです。

 

本連載は、2017年10月31日刊行の書籍『医療・介護に携わる君たちへ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載医療・介護従事者が、日々の仕事の中に「働きがい」を見つける方法

医療法人真正会・社会福祉法人真寿会 理事長

昭和31年生まれ。帝京大学医学部卒業。埼玉医科大学病院での研修後、医療法人真正会霞ヶ関中央病院に入職。同医局長を経て霞ヶ関南病院病院長に就任。現在に至る。

主な社会活動として、全国デイ・ケア協会会長、日本リハビリテーション病院・施設協会副会長、埼玉県地域リハビリテーション推進協議会会長。また帝京大学医学部・兵庫県立大学大学院・埼玉県立大学・目白大学等で講師を務める。厚生労働省社会保障審議会介護保険部会臨時委員も歴任。

これまでの著書に『ケアマネジメントと組織運営』(メヂカルフレンド社)、『主治医意見書のポイント』(社会保険研究所)、『ケアプランの上手な立て方』(日本実業出版)等がある。医師、日本リハ医学会認定臨床医、認知症サポート医、社会医学系専門医・指導医。趣味はゴルフ、海外旅行、風景写真、水彩画等。

著者紹介

医療・介護に携わる君たちへ

医療・介護に携わる君たちへ

斉藤 正身

幻冬舎メディアコンサルティング

悩める医療・介護従事者たちへ、スタッフ900人超を抱える医療・社会福祉法人の理事長が送る「心のモヤモヤ」を吹き飛ばすメッセージ! 日々、頑張っているつもりだけどなぜか満たされない、このままでいいのかと不安になる―…

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