前回は、金融機関における「AIを活用した法人融資審査」の試みを紹介しました。今回は、「接客業務」でAIを導入した事例を見ていきましょう。

AIなら、データベースによる接客ノウハウの共有が可能

ATM利用が大半になった今でも、銀行支店での接客業務の重要性は変わりません。

 

業務案内をするコンシェルジュ的な担当者も必要ですし、ATMに不具合があったときの対応も必要です。なかにはATMの使い方が分からない人もいるので、手助けも必要になります。窓口に並んでいる人のなかには、なかなか順番が回ってこないとクレームを言う人もいるかもしれません。もちろん金融商品の説明や提案を求める顧客にも対応しなければなりません。

 

いずれにしても、接客対応の悪い銀行は長い目で見ると顧客を減らすことになるでしょう。

 

一方で、金融商品の案内などの営業的な業務を除くと、接客対応の多くは収益を生まない業務です。経営的な視点では、このような業務はできるだけ低コストで実現したいものとなります。

 

しかし接客対応は対応する人の能力に依存しますので、できるだけスキルの高い人を充当したいという面もあります。接客スキルを必要とする業種・業態は多数ありますから、賃金を低くしすぎると銀行には来てくれなくなる恐れがあります。

 

そこで、AIを搭載した人型ロボットに接客させる実験的な取り組みが始まっています。AIであれば、データベースで接客ノウハウを共有できるので、属人性のない安定したレベルの接客対応が可能となります。

みずほ銀行は「Pepper」を置く支店を開店

2016年5月、みずほ銀行は東京八重洲口の鉄鋼ビルに「未来の店舗がここからはじまる」というキャッチフレーズで、新しい支店を開店しました。

 

そのなかにデジタルサイネージや人型ロボットなどを配置した「フィンテックコーナー」があります。

 

フィンテックコーナーには人の身長より高い「デジタル情報スタンド」があり、ディスプレイに並んでいるカタログを選択すると、持参したスマートフォンにダウンロードされるなどさまざまな体験ができるようになっています。

 

八重洲支店にはソフトバンクロボティックスの人型ロボット「Pepper」が2台います。そのうち1台は、待合コーナーでおみくじや保険の案内をしています。

 

もう1台がフィンテックコーナーにあるもので、宝くじの案内という限定された範囲ではありますが、IBMのコグニティブシステム、ワトソンとの接続により、顧客とのスムーズな会話や、質問への回答を検索して返すことなどを実現しています。

 

特に先進的な技術は、周囲の雑音と会話をしている相手の発話を区別するものです。これは、音声処理のなかでは特に難しいとされる技術なのです。

 

今後は、株価や為替、市場動向など会話ができる範囲を順次広げていく予定です。

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