AIが可能にする「融資限度枠」と「金利設定」の最適化

前回は、投資信託の販売にロボットアドバイザーがどのように役立てられるのかを取り上げました。今回は、AIによって融資限度枠と金利設定が最適化される可能性と、実際に企業に導入された事例を見ていきます。

融資限度枠や金利の設定は、単純には決められないが・・・

ネットで融資の申し込みができるサービスは何年も前からありますが、申し込みから数日後に融資限度枠と金利が通知されるといったものでした。

 

融資限度枠と金利の設定はなかなか難しく、単純なルールでは決められません。社会的な信用の高い職業に就いていて収入が結構ある人でも、返済が滞ることがよくあります。逆に、本人はアルバイトをしていても実家が裕福といったケースもあります。

 

どちらかというと返済不能になるほうが怖いので、リスク対策として、最初のうちは融資枠を少なめにして金利を高めに設定することが普通です。

 

融資限度枠が大きく金利が低ければ、ほかのローンで借りていた人も借り換えにくるため、シェアが増えます。とはいえリスクに見合った限度枠と金利を設定しないと、貸し倒れで赤字になる恐れがあります。

 

次で説明する通り、限度枠と金利を最適化したいというニーズに対して、AIはベストなソリューションだといえるでしょう。

 

2017年9月から「AIを使った個人向け融資」が開始

みずほ銀行とソフトバンクは2017年9月から個人向け融資事業を始めました。

 

AIが入出金履歴や利用料金の支払状況などから信用力を点数化し、最短30分で融資が開始できるというサービスです。AIを使った個人向け融資は日本初です。

 

想定しているユーザーは20代から30代の若年層で、生活費としてよりも資格取得など自己投資の資金に使ってもらいたいとのことです。アメリカでは低金利の教育ローンを提供するベンチャーが台頭してきており、みずほ銀行とソフトバンクもこうしたニーズを取り込んで、収益の柱にしたいと考えているようです。

 

信用力を点数化する手法は「スコア・レンディング」と呼ばれています。借り手がスマートフォンで必要な情報を入力すると、点数によって貸出額と金利が決まります。ただし貸出額は、年収の3分の1が上限になります。

 

点数は月単位で見直され、判断材料を増やして審査の精度を高めます。精度が高まることで、年利が1.8~15%のカードローンより金利を低めに抑えることができます。若年層は金利が高く設定される傾向にありますが、みずほ銀行とソフトバンクは金利を低めに抑えることで、若年層への貸出額を増やす狙いなのです。

 

もう一つ、個人向け融資は法人向けに比べると少額になりますが、その分申込件数も増えますので、できるだけ審査を効率化したいというニーズがあります。そこにもAIを活用する動機があるわけです。

 

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株式会社オメガ・パートナーズ 代表取締役社長

東北大学大学院理学研究科数学専攻修了、京都大学MBA(金融工学コース)修了。
大学院修了後、富士通株式会社に入社。
金融システム・エンジニアとして、銀行勘定系システム開発プロジェクト、および証券取引システム開発プロジェクトに参画。
その後、みずほフィナンシャルグループのクオンツ・アナリストに転身し、デリバティブ・ビジネスやリスク管理業務に従事。
株式会社Sound-Fの金融工学部門のマネージャーを経て2015年から現職。
近年では高度市場系金融システム開発プロジェクトへの参画や、金融業務向け人工知能開発、
ブロックチェーンを活用したインフラ構築ビジネスに従事している。

著者紹介

AI化する銀行

AI化する銀行

幻冬舎メディアコンサルティング

AIの導入によって日本の銀行が、そして銀行員の働き方が劇的に変化します。 単純作業は真っ先にAIに切り替わり、早いスピードと高い精度で大量の業務がさばかれていきます。 さらに、属人的な業務でさえも、AIが膨大なデータ…

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