今回は、養子縁組が原因の相続トラブルにおける、「調停」に至った場合の流れなどを見ていきます。※本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

紛争になり、養子縁組の無効確認を求められるケースも

前回の続きです。

 

ウ)紛争の誘発

 

兄弟仲が悪くても、異母兄弟(異父兄弟)でも、遺産分割が無事に終了することもありますし、また、親が、1人の兄弟に多くの財産を相続させる遺言を書いても、他の兄弟にも遺留分を侵害しない程度の財産を与える遺言にしておくことによって、トラブルなく遺産分割が終了することがあります。

 

しかし、養子縁組をしておくことによって、紛争を誘発することもあります。たとえば、すでに述べたように、父が死亡し、母と子A、子Bがいる場合、母が死亡したときに、子Aの子a1とa2が、母と養子縁組をしていたことを知った子Bは当然不愉快でしょうから、養子縁組が母の死亡直前にされていた、あるいは入院後、意識がはっきりしないときにされていたというような場合は養子縁組の無効確認を求めて訴訟を起こすことも考えられます。

 

また、母の遺産をどのように分けるかをめぐって、子A・その子a1、a2のグループと子Bとで、争いになることもあります。たとえば、子Bが、「子Aは母から特別受益を得ていた」「私(子B)には母の財産について寄与分がある」と主張することも考えられますし、「この財産はいらない、あの財産が欲しい」というように、どの財産を取るかで争ってくることも考えられます。

 

●養子縁組の無効確認訴訟

●特別受益、寄与分の主張

●遺産の分け方の主張

 

このように、他の相続人の感情を害して、紛争になってしまうこともありますので、注意が必要です。

話し合いが整わない場合、家庭裁判所での調停に

ちなみに、遺産をどのように分割するかをめぐって話し合いが整わない場合、家庭裁判所で調停をすることになりますが、調停がどのように進むかについて、参考までに少し触れておきます。

 

調停を行うのは、裁判官と調停委員ですが、主に調停委員が手続きを進めます。調停では、次の3つの段階について話合いを行い、すべてについて合意に達すれば調停が成立し、1つでも合意に達しないと調停は成立せず、審判という手続きによって、裁判官がどのように遺産を分けるかを決定します。

 

【第1段階】遺産は何か

 

調停の申立書に記載された以外に、財産があるかどうか、登記されていない建物の場合、それは被相続人のものなのかどうかなどを話し合います。

 

【第2段階】特別受益、寄与分の有無

 

特別受益とは、被相続人(前述の例における母)の遺言によってもらった財産、被相続人の生前に、被相続人から結婚、養子縁組、生計の資本として贈与してもらった財産をいいます。特別受益を受けた相続人の取り分は少なくなります。

 

寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をした者がいる場合に、その貢献を金銭的に評価し、それに相当する分を法定相続分に上乗せすることです。たとえば、給料をもらわずに稼業に尽くした、プロの介護士を頼まず、相続人の1人が世話をした、被相続人が払うべき税金を払ってあげてきたなどという場合に、寄与分が認められます。

 

特別受益、寄与分の主張が出てきた場合は、その有無、額について話し合います。

 

【第3段階】誰が何を取得するか

 

遺産にも、実家の土地建物、アパート・倉庫・店舗などの賃貸建物、借地として貸している土地、更地、預貯金、株式などいろいろなものがありますので、どの相続人が何を取得するかを話し合います。

 

エ)将来の相続

 

これは気分的なものかもしれませんが、孫が、資産家の祖父母の子になれば、将来の相続権が保証されます。これが孫の将来に悪い影響を与えないとも限りませんから、この点も一応は考慮する必要があります。

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    本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    相続に活かす養子縁組

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