事業再生の効率を高める「中小企業承継事業再生計画」とは?

今回は、別会社を使った事業再生を、さらに効率よく進めることを可能にする「中小企業承継事業再生計画」の認定制度について見ていきます。

一定基準を満たした再生計画で3つの支援措置が活用可

別会社を使った事業再生スキームについては、その有用性について国も高く評価しています。そして、中小企業の経営立て直しのために、このスキームの活用をより一層促そうと、「第二会社方式による<中小企業承継事業再生計画>の認定制度」という新たな制度(以下「認定制度」)を、近時スタートさせました(なお「第二会社方式」は、別会社を使った事業再生スキームと同義です)。

 

この認定制度を利用すれば、別会社による事業再生をさらに効率よく進めることが可能となるでしょう。すなわち、認定制度では、一定の基準を満たした再生計画(「中小企業承継事業再生計画」)を策定すれば以下の3つの支援措置を活用することができます。

 

①別会社が営業上の許認可を再取得する必要がある場合には、旧会社が保有していた事業に係る許認可を別会社が承継できる。
②別会社を設立した場合等の登記に係る登録免許税、別会社に不動産を移転した場合に課される登録免許税の軽減措置を受けることができる。
③別会社が必要とする事業を取得するための対価や設備資金など新規の資金調達が必要な場合、日本政策金融公庫の融資制度、中小企業信用保険法の特例、中小企業投資育成株式会社法の特例を活用することができる。

 

ただし、①については、すべての許認可が承継されるわけではありません。承継されるのは、原則として次の7つですので、注意が必要です。


●旅館営業の許可〈旅館業法第3条第1項の規定による許可〉
●一般建設業の許可・特定建設業の許可〈建設業法第3条第1項の規定による許可〉
●一般旅客自動車運送事業の許可(バス・タクシー)〈道路運送法第4条第1項の規定による許可〉
●一般貨物自動車運送事業の許可(トラック)〈貨物自動車運送事業法第3条の規定による許可〉
●火薬類の製造の許可、火薬類の販売営業の許可〈火薬類取締法第3条または第5条の規定による許可〉
なお、その他、次の許可については特別な措置が設けられています。

●一般ガス事業の許可・簡易ガス事業の許可〈ガス事業法第3条または第37条の2の規定による許可〉
●熱供給事業の許可〈熱供給事業法第3条の規定による許可〉
●食品衛生法の営業の許可〈食品衛生法第52条の許可〉
●公園事業の認可〈自然公園法第10条第3項の認可〉
●酒類の製造免許・酒類の販売免許〈酒税法第7条第1項または第9条第1項〉

経済産業局への申請から認定までは原則1か月かかる

認定制度を利用するための申請は、自社の主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局に対して行います(なお、申請前に中小企業再生支援協議会等の公正な債権者調整プロセスを通じ、再生計画の内容について債権者の合意を得ることが求められています)。

 

申請の際に必要となる主な書類は以下の通りです。

●国が指定する様式の申請書
●申請者の定款の写し、貸借対照表等
●事業の継続及び再建を内容とする計画及び計画の専門家による報告書(企業が、中小企業再生支援協議会の支援等を受け作成する事業再生計画)
●事業が相当程度強化されることを示す書類(計画終了時点で承継事業者が①有利子負債÷CF(キャッシュフロー)≦10、②経常収支≧0を満たすことを示す書類)
●公正な第三者機関または公正な手続きが行われていることを示す書類
●事業に必要な許認可等を保有していることを証する書類
●従業員の地位を不当に害するものでないことを証す書類等

 

申請から認定までは、原則1か月の期間がかかるとされています(ただし、許認可の承継を求める場合には、別途、許認可に係る許認可行政庁の審査期間がかかります)。

 

また、申請を行うためには、「過大な債務を負っていることその他の事情によって財務の状況が悪化していることにより、事業の継続が困難となっている」ことが必要です。さらに、業種分類ごとに定められた資本金または従業員数など、図1に挙げた要件を満たすことも求められています。

 

さらに、最終的に認定を受けるためには、以下のような要件も満たすことが必要です。

(1)特定中小企業者の財務の悪化状況として、計画申請時点で以下を満たすこと。

①ネット有利子負債÷CF(キャッシュフロー)>20
②キャッシュフロー<0

(2)中小企業承継事業再生計画の対象となる事業の強化に関して、計画終了時点で以下を満たすこと。

①ネット有利子負債/CF(キャッシュフロー)≦10
②経常収支≧0

(3)計画の実施方法として、既存または新たに設立する事業者への吸収分割または事業譲渡、または新設分割により特定中小企業者から承継事業者へ事業を承継するとともに、事業の承継後、特定中小企業者を特別清算手続きまたは破産手続きにより事業の承継後2年以内に清算するものであること。

(4)公正な債権者調整プロセスを経ていること
債権者調整が適切になされているものを認定するため、公正性が担保されている以下の手続きを経ていることが必要。

●中小企業再生支援協議会
●RCC企業再生スキーム
●事業再生ADR
●地域経済活性化支援機構
●私的整理ガイドライン
●民事再生法、会社更生法

(5)承継事業者の事業実施に係る資金調達計画が適切に作成されていること
(6)営業に必要な許認可について、承継事業者が保有、または取得見込みがあること
(7)承継される事業に係る従業員の8割以上の雇用を計画期間中確保すること
(8)従業員との適切な調整が図られていること
(9)特定中小企業者の取引先企業の売掛債権を毀損させないこと

 

このように認定制度を利用するためには、様々な要件をクリアする必要がありますが、メリットが非常に大きい制度であることは間違いありません。ぜひ前向きに検討してみてください。

本連載は、2014年10月25日刊行の書籍『引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

株式会社スペース 代表取締役兼CEO

1954年東京都生まれ。三井不動産販売退職後、祖父が大正12年に中野で創業した「山一不動産」の3代目に就任。バブル崩壊とともに300億円の負債を背負いながら、事業再生に奔走する。1996年「スペース」を創設し、「山一不動産」の営業権譲渡を行うことで、先代からの基盤を守り、社員を切り捨てることなく事業再生させた。現在はこの時の自身の経験を元に、同じような悩みを抱える中小企業経営者の相談に乗り、専門家チームのメンバーとして、ボランティアでアドバイザーも務めている。中野区観光協会準備会メンバー。一般社団法人中野区観光協会監事。

著者紹介

連載引き継いだ赤字企業の「再生」術

引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法

引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法

高山 義章

幻冬舎MC

中小企業の資金繰り悪化の対応策として時限立法として成立した法案、「金融円滑化法」が終了した。 現在のところ、これにより目立った動きはないものの、この先いつ債権者が債権処理に動き出してもおかしくはない。そうなれば…

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