今回は、大改正された民法の「債権法」の内容について解説します。本連載は、鈴木淳巳氏が代表社員弁護士を務める弁護士法人アディーレ法律事務所の著書『弁護士が教える!小さな会社の法律トラブル対応』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、会社経営を守るための法律知識を紹介していきます。

「債権法」とは、債権債務全般に関係する法律

2017年5月26日、「民法の一部を改正する法律案」と「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」が成立し、6月2日に公布されました。なお、実際に施行されるのは、公布の日から起算して3年以内の政令で定める日となります。

 

今回の民法改正は「120年ぶりの大改正」といわれています。弁護士だけでなく、中小企業の社長さんにとっても少なからぬ影響が出ることが予想されます。

 

今回改正がなされたのは、民法の中の「債権法」です。

 

債権法は債権債務全般に関係する法律で、事業資金の保証や事業で生じた債権の消滅時効に関することも、債権法で規定されています。

 

企業経営に関わる改正は複数ありますが、今回は、そのうち5つの改正点をご紹介します。

保証人となる際の手続を厳格化し、保証人の保護を強化

①個人保証の手続厳格化

 

従来から、「多分大丈夫だろう」と軽い気持ちで、知人や親族の事業資金借入の保証人となるケースが見られました。事業資金は借入額が大きく、主たる債務者である知人や親族が支払えなくなり保証人に請求がなされると経済的破綻に至る可能性が極めて高くなってしまうため、安易に保証人となることがないよう手続を厳格化すべきとの意見がありました。

 

そこで、今回の改正では、

 

●事業資金について保証契約を締結する前の1か月以内に、保証人となる者が保証債務を履行する意思を公正証書によって表示していなければならないこと

●主たる債務者が保証を委託する場合には、保証人となる者に、自身の財産・収支状況、他の負債の状況等の情報を提供しなければならないこと

●主たる債務者の委託を受けて保証人となった者から債務の履行状況について質問があった場合には、主たる債務者は情報を提供しなければならないこと

 

などの規定を設けられ、保証人となる際の手続厳格化、保証人となった後の保証人の保護が強化されることとなりました。

 

ただし、会社の取締役などが会社の債務を保証するような場合は適用されない規定もありますので、どのようなケースで、どのような手続が必要となるのか、条文をよく確認することが大切です。

弁護士が教える! 小さな会社の法律トラブル対応

弁護士が教える! 小さな会社の法律トラブル対応

鈴木 淳己

あさ出版

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