今回は、銀行が企業に対して、損益計算書と貸借対照表以外の「必要以上の資料の提出」を要望する理由について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「内訳明細から別表まで、全部渡していました!」

「借入金の内訳明細など、
なんでもかんでも銀行に渡さないでください!」
と、前回書かせていただきました。
すると、数名の方から、
「うちも渡していました!」という、
深き反省の弁をいただきました。

 

なぜ渡していたのか尋ねると、
「いやぁ、そういうもんだと思っていましたので…。」
「これまでずっと渡していたので、
何の疑問も感じていませんでした…。」
といった回答を、皆さんからいただきました。

 

なかには、
「内訳明細から別表まで、全部渡していました!」
という例もありました。
これではもう、隠すところなしの丸裸、すっぽんぽん状態です。
出しすぎ、見せすぎです。
「どうぞお好きなように。」
と身を委ねているようなものなのです。
交渉相手に丸腰どころか、すっぽんぽんでは、
有利な条件を引き出せないのは、当然なのです。

「うま味」を確保できそうな提案の種を探している⁉

銀行はとにかく、決算書を欲しがります。
返済能力を判断したいのです。
しかしそれだけなら、
損益計算書と貸借対照表だけで十分です。

 

なのに、内訳明細や別表まで欲しがります。
融資以外の提案余地を、探しているのです。
「この土地が遊休地なら、
賃貸物件建築の提案をできそうだな。
「この株主構成なら、
うちの事業承継スキームを提案できそうだな。」
「社長がこの役員報酬なら、かなり貯めているな。
社長個人に投資の提案をしたら、喜びそうだな。」
などなど、うま味を確保できそうな提案の種を、
探しているのです。

 

いままでもらっていた資料を、
「もう提出していただかなくても結構ですよ。」
とは、銀行員は絶対に言いません。
しかし経営者の中には、
「いままで提出していたものを、提出しなくなったら、
 何か怪しまれませんか?どう説明すればよいですか?」
と心配される方もおられます。
そんなときは、
「銀行交渉の外部講師から、きつく指導を受けました。」
と言えばよいのです。

 

特に、大してお世話にもなっていない銀行なら、なおのことです。
厳しい姿勢で、必要以上の資料は提出を断ればよいのです。
で、ある程度、協調関係を保ちたい銀行なら、
ギブ&テイクの範囲でほどほどに、提出すればよいのです。
要は、個々の関係性において、さじ加減をしてほしいのです。
加減もなく、言われるがままに、資料を渡してはならないのです。

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    本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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