今回は、会社・事業の売却における「情報流出リスク」とその予防策を見ていきます。※本連載では、事業承継の選択肢のひとつとして、M&Aの基礎知識を紹介します。

一度情報が出回ると、買い手から敬遠されることに…

会社や事業の売却において、知らず知らずのうちに自分の会社が、色んな所に拡散されて出回ってしまうということは残念ながら非常に多いです。一度案件が出回り案件とされてしまうと、買い手やM&Aアドバイザーから敬遠されてしまい、大きなマイナスの影響を与えてしまいます。

 

M&A業界は胡散臭いブローカーのような人たちも多く、買い手が売り案件情報とどんな形で出会ったのかによって成否が大きく変わります。一生に何度もない一大イベントなので、大事に大事に進めていきたいものです。

 

出回り案件とはそれでは出回り案件とは具体的にどんな状況でしょうか? 我々が定義している出回り案件の捉え方としては、ある買い手企業やM&Aアドバイザーに何度も同じ売り案件が持ち込まれてしまったタイミングからそれは出回り案件になってしまいます。

 

出回り案件のデメリット

 

出回り案件は、訳あり案件として捉えられてしまうことが多いです。なぜなら、本来いい会社であればすぐに成約するはずで、出回ってしまっているということは、成約しない何か重要な欠陥があるんだなと警戒されてしまうからです。特に売却希望時期が早いと確実に怪しまれます。デメリットは二つの立場から語ることができます。

 

買い手企業にとっての出回り案件

 

前述の通り、訳あり感が出てしまいます。M&Aを担当するのは社長や役員、経営管理部が多く、非常に忙しい場合が多いです。一度見た案件はすぐにNoと言います。特に上場している会社であればのれんの減損を恐れてリスクのある会社と見なされると敬遠されてしまいます。

 

最悪なのは社名が漏れてしまっている場合です。アドバイザーによっては簡単に社名を伝えてしまう場合があります。社名が分かった状態で出回ってしまうと経営にも大きく関わります。

 

M&Aアドバイザーにとっての出回り案件

 

1.買い手からの信頼を毀損する

出回り案件を出回り案件と知らずに、紹介してしまうと買い手からの信頼を失うことに繋がります。

 

2.とにかく紹介するインセンティブが減る

出回り案件と分かった瞬間に、買い手に紹介しても成約しづらい・もしかしたら他のアドバイザーが途中でM&Aを決めてしまうかもしれないという理由から、案件として放置されやすくなります。

アドバイザーによる「横流し」で情報流出することも

よくある「出回り案件化」してしまう4ケース

 

1.アドバイザーが横流し

M&Aアドバイザーによっては、買い手とのネットワークが少ない人もいます。自前のネットワークで買い手を紹介できなそうだと判断した場合、別のアドバイザーやブローカーに案件が出回ることが非常に多いです。

 

2.顧問や相談相手が拡散

顧問や相談した経営者にこういう買い手を紹介してくれと頼んだ場合に、拡散されて出回ってしまうケースがあります。

 

3.アドバイザー等に複数者相談する

最初に当たったアドバイザーが、買い手を中々紹介してくれない場合に他のアドバイザーに依頼したりすることや複数アドバイザー当たった方が効率良いと思い進めた結果、出回ってしまうことが多いです。アドバイザー同士で何の連携もさせることなく、複数者相談すると、出回り案件になる可能性が非常に高いです。例えば、売却金額が1億円未満と少額の規模であったり、不人気な業態であった場合は、連携すると逆にどちらのアドバイザーもやる気を失って動かなくなってしまうといったリスクがあります。

 

4.M&Aのマッチングサイトにバレバレな形で掲載

M&Aのマッチングサイトは、一部のアドバイザーや買い手企業が使っている場合があります。M&Aのサイトは買い手企業が見ている場合が多いのと、tranbiは買い手企業が使っている場合が多いので、あまりにも分かりやすい形で掲載していると情報が漏れてしまうリスクがあります。実際にあった例でいうと、M&Aを少し検討していた会社が某マッチングサイトに掲載した際に、競合サービスを運営しているIT系大手上場企業の担当者が買い手として発見して情報が漏れたという例があります。ちなみに、M&AクラウドはM&Aアドバイザーしか登録していないので、競合に漏れる心配はありません。

「一社専業」にするなど、情報漏れリスクの管理を

出回り防止策

 

1.一社専業でやる

一社専業でやりきるというやり方です。アドバイザーによっては時間がかかったり、腕がなかったりすることはありますが、情報漏れのリスクは少ないです。能力を見極めるために、3ヶ月間専業契約で区切ってやることも一つの手でしょう。

 

2.アドバイザー同士連携する

1社専業でやったとしても、依頼したアドバイザーが、他のアドバイザーに過去に自分が当たった買い手を共有したりせずに進めてしまい、出回り案件となってしまう場合もあります。まず各アドバイザーが紹介できる買い手候補リストを出してもらい、担当者を決めて回ってもらいましょう。連携して行う場合のフィーの配分の決め方は、アドバイザー同士と話合って決めましょう。アドバイザーを2社にしたからといって支払う金額は売却額の約5%から変わりません。着手金のみ求められる場合があるでしょう。

 

3.そもそも横流しを禁止する

基本的に自前で持っているネットワークのみで対応してもらうことを決めましょう。リストが尽きたら共有してもらい他のアドバイザーを使うといった工夫もできます。

 

4.買い手探しはプロに依頼する

友人等のつてから買い手を見つけることもできますが、リスクは覚悟しましょう。

本連載は、株式会社M&Aクラウドのサイト『M&A to Z』(https://media.macloud.jp)から転載したものです。

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