政府・日銀の政策、海外動向・・・景気はどんな要因で動くのか?

今回は、景気変動が起こる仕組みを見ていきます。※本連載は、わかりやすい経済解説で知られる久留米大学商学部教授・塚崎公義氏の著書、『経済暴論』(河出書房新社)の中から一部を抜粋し、普段なかなか報道されない、日本の景気と財政の実態について解説します。

景気は勝手に「回復」「後退」するわけではない

景気はよくなったり悪くなったりしますが、景気が自分で勝手によくなったり悪くなったりするわけではありません。理論的には在庫循環(在庫投資の変動を主因とする約40か月周期の景気循環)等々があり得ますが、実際に観察されることは稀です。

 

景気には、一度上(下)を向くと、そのまま回復(後退)を続ける性質があるのです。「物が売れるからつくる」「つくるために雇う」「雇われた元失業者が給料で物を買う」といった好循環がはたらくからです。「増産のために工場を建てる」と、鉄やセメントや設備機械の売上が増えます。好況時は企業の決算が良好なので、銀行は工場建設資金を喜んで貸してくれます。地方自治体も、税収が好調なので積極的に公共投資を行なうかもしれません。

 

しかし、景気回復は無限には続きません。外国でリーマン・ショックのようなことがあり、日本の輸出が減少すると、「売れないからつくらない」「つくらないから雇わない」「失業したので物が買えない」という悪循環が始まってしまう(「景気が悪化に転じる」「腰折れする」などと呼びます)かもしれません。

 

外国の景気後退がなければ、景気は順調に回復・拡大を続けますが、次第にインフレが心配になってきます。インフレは金融資産を目減りさせ、高齢者の老後資金を直撃しかねませんから、インフレを防ぐことは政府・日銀の重要な仕事のひとつです。そこで、日銀が金融引き締め(利上げ)を行なうなど、景気をわざと悪化させてインフレを抑制します。

 

こうして、景気の回復・拡大が止まり、景気が後退を始めて失業者が増えると、今度は政府・日銀が景気浮揚策を採ります。政府は財政政策として、公共投資と減税を行ないます。公共投資は、橋や道路をつくるために失業者を雇うことで、雇われた元失業者が給料で物を買うことを期待するわけです。

 

政府・日銀の代表的な景気対策とは?

減税は、所得税減税のように「広く浅く減税して消費者の懐を温かくして消費をしてもらおう」というものと、「設備投資をした企業には減税をするから、皆さん設備投資をしましょう」などと呼びかける「設備投資減税」などがあります。後者は、うまくいけば少額の減税で大きな投資が誘発できるかもしれませんが、もともと投資する予定であった企業に関しては景気刺激効果は小さいので、普通の減税との優劣は区々(くく)でしょう。

 

政府が減税をする一方で、日銀は金融を緩和します。紙幣を大量に印刷して、銀行がもっている国債を購入する、というイメージです。それにより、市場に資金が出回り、金利が下がり、「金利が低いから、借金をして工場を建てよう」という企業が増えることを期待するわけです。最近の日銀は、あまりに大量の資金を市場に供給したため、銀行間貸借の金利がゼロになっていますが、それでも大量の資金を供給し続けています。ゼロ金利下の金融緩和が景気回復に効果があるのか、議論のあるところではありますが。

 

最近ではさらに、マイナス金利を採用しています。といっても、私たちには直接関係ない話なので、冷静になりましょう。「銀行が日銀に預金をすると、金利がマイナス(預けた金が減ってしまう)なので、銀行は日銀に預金するのをやめて企業向けに貸出を増やしましょう」という話です。

 

政府・日銀の景気対策に加えて、外国の景気回復で輸出が増えれば、日本の景気も順調に回復するでしょうが、外国の景気が悪化して輸出が減れば、政府・日銀の対策がなかなか奏功しないかもしれません。

 

さて、上記のように景気は自分では方向を変えないので、景気は方向が重要です。政府は、「景気回復宣言」を出しますが、これは「景気の方向が下向きから上向きに変わった」という宣言です。「景気の水準が〈悪い〉から〈良い〉に変わった」という宣言ではないので、注意が必要です。「政府は間違えている。景気は全然よくない」という人がいますが、当然です。景気が下向きから上向きに変わった翌日は、景気が2番目に悪い日ですから。

 

重病人が一命をとりとめ、高熱が下がったとき、医者が「命は助かりました。あとは無理をしなければ、いずれ退院できるでしょう」といったとします。「私は少しも元気ではありません」と怒る人はいませんね。それと同じことなのですが、政府は医者ほど信頼されていないので、怒る人が多いのかもしれません。筆者のような景気の予想屋も、医者ほど信頼されているとは思えませんから、仕方ないですね(笑)。

 

イラスト:堀江篤史

 

企画・編集:株式会社夢の設計社

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久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

経済暴論

経済暴論

塚崎 公義

河出書房新社

「トランプ大統領は日本経済にとってプラス」「勤勉と倹約が不況を長引かせる」…経済の話を“極論と暴論”で面白がりながら学ぶ本! 教科書はもちろんのことニュースや新聞でも知ることができない“経済の裏のウラの真実”と…

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