今回は、仮想通貨の「損益認識」のタイミングを事例を用いて見ていきます。※本連載では、税理士・西浦雅人氏が、仮想通貨にまつわる税金について分かりやすく解説します。

「利益が実現する」とは、どんな状態なのか?

確定申告でどの金額を記載しないといけないのか、みなさん迷われると思います。そもそも、どのタイミングで損益を認識するのかわかってないと、金額の問題にまでたどり着けませんね。

 

ということで、今回は損益認識のタイミングについて解説します。

 

第1回で、「何もせずにADAのまま、自分のウォレットにある状態では、利益が実現しないので、税額は発生しません」と書きました。

 

ここで問題です。「利益が実現する」とは、どういう状態だと思いますか?

 

一般的な商品を売る、買うという取引においては、売ったタイミングで損益を認識します。単純に言うと、自分のモノが、誰かに移動した時です(自分から自分に移動は、損益を認識しません)。


仮想通貨についても、自分の保有しているものが誰かに移動した時に、損益を認識すると考えて良いです。

 

自分が保有しているADAをBTCに変えた時は、自分のADAが誰かに移動、誰かのBTCが自分に移動。この移動したタイミングで損益を認識します。

 

自分が保有している仮想通貨を円にかえた時は、自分の仮想通貨が誰かに移動、誰かの日本円が自分に移動。この移動したタイミングで損益を認識します。

 

重要なキーワードは「移動」です。

仮想通貨を使って「割り勘」をすると・・・

これから増えてくるであろう事例を用いてご紹介します。


①割り勘
②買い物
③5万円で買ったBTCが100万円になった
④マイニング報酬をもらった
⑤仮想通貨を自分の他のウォレットへ移動(損益を認識しません)

 

①割り勘


AさんとBさんで、居酒屋に行きました。その時の会計が2万円でした。Aさんは手持ちの現金が無く、カードで支払ったとしましょう。そして、Bさんも手持ちの現金が無く、どうしようか困っています。


そこで、BさんはAさんに対して、1万円分の仮想通貨を送ったとします。Bさんの仮想通貨がAさんに移動し、BさんからAさんに支払うべき1万円を支払わなくて良くなった。このタイミングで損益を認識します。

 

②買い物


家電量販店でテレビを買いました。支払い方法は仮想通貨でした。自分の仮想通貨が家電量販店に移動、家電量販店のテレビが自分に移動。この移動したタイミングで損益を認識します。

 

③5万円で買ったBTCが100万円になった 

 

自分のウォレットで保有したままで、移動が無いので損益は認識しません。


④マイニング報酬をもらった


自分の電気代や労力を誰かに提供、プログラミングされた仮想通貨が自分に移動。この移動したタイミングで損益を認識します。 


⑤仮想通貨を自分の他のウォレットへ移動


自分が持っている仮想通貨を、自分が保有する他のウォレットに送金。自分の仮想通貨が自分の別のウォレットに移動しただけなので、取引相手はなく、自己完結しています。そのため、損益は認識しません。

 

税法の発想では、物々交換も「売買」として考えるので、損益を認識します。土地建物を交換した時の特例というのもありますが、この場合は損益は認識しません。これは特例ですね。


滅多にないですが、先祖代々から受け継いできた5,000万円の壺で、5,000万円の家を建てた場合。これも物々交換ですので、損益を認識します。自分が持っている壺が大工さんへ移動、大工さんが建てた家が自分に移動。この移動したタイミングで損益を認識します。 

 

なんとなくのイメージがつかめたら良いです。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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