前回までは、税務調査に関する「よくある誤解」について解説しました。今回は、税務調査官が「決算書」の中で疑いの目を向ける事項について見ていきます。

特に厳しくチェックされる「売上」「原価」「人件費」

税務調査対策としては、調査官が決算書の中で具体的にどのような点に疑いの目を向けるのかを把握しておくことも大切になります。まず、連載第2回で触れたKSKシステムに関する説明のように、いわゆる“異常値”については、真っ先にチェックします。

 

その他には、売上、原価、人件費が主たるチェック対象となります。まず、この3つの科目については、漏れがないか、架空計上がないかを厳しく見られることを覚悟しておきましょう。もっとも、売上の中身等に関しては、業種・業態等に応じて、調査対象となる会社にはそれぞれ特殊性があるので、税務署側が調査の際に3つのうちのどこにエネルギーを注いでくるのかはおのずと異なってくることになります。

 

たとえば1個1円のネジを売っているような、商品単価の低い商売の場合には調査官も「絶対に、漏れているものを見つけてやる!」などと売上の問題を血眼になって追及してくることはないでしょう。

決算日前後の数字の「期ズレ」にも細心の注意を・・・

また、いわゆる「期ズレ」も調査官の重点チェックポイントになっています。期ズレとは、税法上は今期の決算書で計上されるべき売上が、翌期に計上されている状況のことです。

 

たとえば3月決算で25日締めにしている甲社が、3月26日に商品を納品したとします。この場合、甲社ではこの売上を3月分ではなく4月分として計上することになります。つまり、今期ではなく、翌期に計上することになるわけです。

 

しかし、税務署からは期ズレとみなされ、今期に計上することが求められることになるでしょう。また、別の例として、やはり3月決算の乙社で、販売目的の商品を3月末頃に仕入れていたとします。しかし、税務署に提出された書類上は、その商品が在庫としても売上としても計上されていません。

 

この場合、税務署は、「3月末までに商品が売れているか、あるいは3月末の段階で在庫として残っているかのどちらしかあり得ない」と考えます。そこで、商品がいつ売れたのかを確認し、売れたのが4月に入ってからとわかれば、在庫の漏れと判断することになります。たとえ、4月には売れていたとしても、3月末には在庫だった以上は、今期の在庫として計上すべきだからです。

 

また、逆に3月の段階で売れていたことがわかれば、在庫ではなく売上の漏れを指摘してくるでしょう。このように、物を売る商売の場合には、期ズレが生じないよう決算日前後の数字については細心の注意を払うことが重要になります。

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    本連載は、2015年11月12日刊行の書籍『「儲かる」社長がやっている30のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    「儲かる」社長がやっている30のこと

    「儲かる」社長がやっている30のこと

    小川 正人

    幻冬舎メディアコンサルティング

    改善の兆しが見えてきたといわれる日本経済ですが、その恩恵を受けているのはほとんどが大企業であり、多くの中小企業はむしろ窮地に立たされているのが現状です。 円安による原材料費などの高騰、人件費上昇や電気料金の値上…

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