今回は、ドライアイによる目の乾きに「環境の改善」が必要な理由を取り上げます。※本連載は、医療コミュニケーションの研究とともに、患者さんへ病気の知識をわかりやすく伝える活動を続けている眼科専門医・平松類氏の著書『本当は怖いドライアイ』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、ドライアイの基礎知識と対処法をご紹介します。

「目が乾いている」=「涙の出がわるい」とは限らない

あなたは「ドライアイは治らない」と言われているかもしれません。けれどもあきらめないでほしいのです。ドライアイは治せます。ではどうすればドライアイを治すことができるのでしょうか? ドライアイはその名の通り目が乾いているということです。

 

となると乾いているのだから水を足せばよいと思うでしょう。けれどもそれは間違いなのです。間違いをそのままにしておけば、どんなに頑張ってもドライアイは治りません。

 

涙というのは絶えず目の表面を覆ってくれています。その涙が蒸発または目の内側から鼻のほうに抜けていくという流れがあります。しかし、ここで注意があります。「目が乾いている」=「涙の出がわるい」とは限らないのです。

涙の量は十分でも「質がわるい」と乾いてしまう

目が乾いているときには二つの理由があり、一つ目が「涙の出がわるい」、二つ目が「涙の質がわるい」です。現代の生活で多いのは、後者の「涙の質がわるい」です。涙の質がわるいと、目の表面に十分に涙が出てもすぐに乾いてしまいます。そうすると「量」は十分にあるのに「質」がわるいために乾く、ということになるのです。

 

[図1]涙の量と質

 

例えばこれまでドライアイに対して量を増やす、つまり目薬をするという治療は、砂漠に水をまくようなものでした。確かにそのときは水にぬれます。しかしすぐにまた乾いてしまいます。ただ水をまくだけではだめなのです。その水がとどまって絶えず水があるようにしなければいけません。

 

そのための方法はいろいろあります。土壌の改善をする、川をつくる、木を植える、水がたまる池をつくる、あるいは砂漠の表面にとどまりやすい水分にするなど、「本質的に乾く環境をよくする」必要があるのです。そのようなことをすれば確実にドライアイはよくなるのです。

 

では、環境を改善するにはどうすればいいのでしょうか? そういう薬があるということでしょうか? 実はそうではないのです。確かに最新の治療を用いると昔よりは環境改善できるお薬があります。けれどもドライアイは薬に頼って治るものではありません。あなたが生活の中で何をするかによってドライアイはよくもわるくもなるという病気なのです。

本連載は、2017年1月20日刊行の書籍『本当は怖いドライアイ』から抜粋したものです。最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

本当は怖いドライアイ

本当は怖いドライアイ

平松 類

時事通信出版局

医師も軽く考えがちなドライアイ。 目薬で一時的によくなっても、根本は治っていません。 でも、安心してください。 いい対処法があるのです。この本に出会ったことが、苦しみと決別するチャンスです。 目が乾燥することによ…

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