一代で11の医療・介護施設の開業に成功した医師の軌跡から、事業拡大における極意を見ていく本連載。今回は、その第19回です。

開業を決める前に抱えていた、借金返済に対する不安

開業の経緯をたどる際に、どうしても忘れられないことがあります。

 

それは、貯金が100万円しかないのに、どうやって資金を工面するかとなった時のことです。仮に借りられても運転資金を失えば、開業は失敗です。

 

義兄が開業していたから泣きつこうかとも思っていましたが、断られることも考えられます。そこで悩んでいた時、不動産業を営む協力者のNさんがこんなアイデアをくれました。

 

「万が一、借金をしても返済できなかったらどうすればいいか、先生知っていますか?」

 

私にはまったく何も思い浮かびませんでした。するとNさんは言いました。

 

「奥さんと離婚して、先生だけが借金を踏み倒せばいいんですよ。そうすれば、奥さんやお子さんに罪はかかりません」

 

なるほど、と思いました。人を殺したりするわけではないのだから、死刑になることはないでしょう。法律に明るくないので分かりませんが、詐欺になるとすれば何カ月か何年間か、私一人が刑務所に入ればいいだけです。また自己破産すれば、そこでチャラになるはずです。

 

そう考えた途端、ものすごく気が楽になりました。

 

「なんだ、俺一人、ちょっとお務めすればなんとでもなるじゃないか」

 

そこから急に元気が出てきました。悩むことなどなかったのです。

 

私一人が土下座をして地べたを這いずり回ってでも、粘りに粘ってお金を手に入れることができれば、先に進めるわけです。これで怖いものなどなくなり、その結果、さまざまな手助けをもらいながらも開業するに至りました。

 

こうして目標の歯車が一つ、カチリと動いたのです。

尊敬する先生の教え「始めたら絶対止めないこと」

私の母校、知名中学校の校訓に「精一杯」という言葉があります。興味と好奇心を持ち何か目標を見つけたら、執念を持って精一杯努力し、続けていく。そうすれば一つ歯車は動きます。一つ動いたら、今度は二つ目を動かし、三つ目を動かしていくうちに加速し、先に進んでいくことができます。

 

これは尊敬する中山先生の「とにかく始めること。始めたら絶対止めないこと」という教えにつながります。特に私の場合は人工透析を扱っていますから、いったん始めたら止めるわけにはいきません。仕事自体、継続が最も必要とされます。

ドクター・プレジデント

ドクター・プレジデント

田畑 陽一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

医療者である開業医が突き当たる「経営」の壁。 経営者としてはまったくの“素人”からスタートした著者は、透析治療を事業の柱に据えて、卓越した経営センスで法人を成長させていく。 徹底的なマーケティング、2年目で多院展…

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