今回は、クルーズ旅行が「簡単・快適・割安」であると言える理由を探ります。※本連載は、外国客船「オーシャニアクルーズ」の乗船コーディネーターである喜多川リュウ氏の著書、『極上のクルーズ手帖』(クルーズトラベラーカンパニー)の中から一部を抜粋し、クルーズ旅行の予約から、下船までの基礎知識を紹介します。

移動時間がないため、散策や買い物を存分に楽しめる

旅行を大きく分けると「滞在型」と「周遊型」のふたつがある。「滞在型」の代表は、たとえばハワイやグアムなどのビーチリゾートでの1週間前後の旅行だ。「周遊型」は、1〜2泊ずつ宿泊地を変えてバスや列車で移動しながら、その地域の見どころをめぐるものだ。ヨーロッパ旅行の主流はいまもこの形態だ。

 

のんびりするのには「滞在型」はいいが、同じ場所でのショッピングに飽きてしまったり、食事が単調になったりしがちだ。

 

「周遊型」は限られた時間で多くの見どころを網羅しているが、その反面、スケジュールに追われがちで、日中は移動にも多くの時間を取られてしまう。どちらにもメリット、デメリットはある。ところが、その両方のメリットを掛け合わせた新しい旅のかたち、それが「船旅」なのだ。

 

客船はいわば「動くリゾートホテル」。いったん乗ってしまえば、ずっとそこが自分の部屋となる。遊び疲れて眠っている間にも、船が勝手に次の目的地まで運んでくれるから、実質的な移動時間はほとんどゼロに等しい。毎日訪問地が変わるのに、移動にともなう早朝の荷造りやホテルのチェックアウトさえも必要ない。

 

のんびり滞在型のようでありながら、毎日、違う土地での散策やショッピングも楽しめる。しかも貴重品の携行を最小限に抑えられるので安全性はきわめて高い。

 

一見、スロートラベルの代表のように思われがちな船旅だが、時間効率という点では、陸路の周遊型ツアーよりはるかに優れている。一度体験してしまえば、船旅はハワイ滞在ツアーより簡単、快適、割安と言える。

船旅だからこそ「心の欲求」に応えられる

「来た、見た、勝った」

 

小アジアのポントスを破った際、シーザーはたった3つの言葉を使ってローマに戦況を伝えたという。しかし、さしずめいままでの日本人の旅行は「来た、見た、買った」であった。そんな日本人の旅の価値観が急速に進化をしている。

 

「来た、見た、買った」という表面上の経験では飽き足らず、「出会った、体験した、感じた」というきわめて個人的な目的の達成や特別な感情に重点が置かれるようになってきた。この意識の変化が船旅需要をしっかりと底上げしている。

 

「旅」とは、クルマや電化製品のようなモノではなく「時間」そのものだ。手にとって見ることもできないし、均一な品質保証も難しい。旅先で出会う人々、ツアー仲間の顔ぶれ、ホテルの部屋からの景色など、すべてが異なる。もちろん、天候や季節にも大きく左右される。

 

たまたま立ち寄ったレストランのウェイターの笑顔でその土地の印象ががらりと変わったり、天気がいいだけで、何かいいことが起きそうな予感がしたり、ワクワクしたりする。反対に飛行機が遅れたり、バスが渋滞にハマるだけで、その日の予定は乱れる。天気が悪ければ、期待した風景とは出合えないし、その土地のイメージも悪くなってしまう。

 

「旅」ほど、つねに不確定な要素にさらされた商品もない。それどころか、旅はまさに「偶然」の連続だ。予測不能なシチュエーションが、予測不能な出会いや発見につながり、さらに予測を超えた感動をもたらす。本当の発見は、旅先にあるのではなく、それらが呼び覚ます自分の内にあるのかもしれない。だから「予測不能な体験」が旅の最大の魅力であり、最大の価値なのではないかと思う。

 

旅の価値が「量」から「質」に急速にシフトしている現在、そんな「心の欲求」に応えられる旅の形態が、私は船旅なのだと思っている。

極上のクルーズ手帖

極上のクルーズ手帖

喜多川 リュウ

クルーズトラベラーカンパニー

クルーズの裏ワザを知り尽くした著者、喜多川リュウ氏によるクルーズ取り扱い説明書。 予約できる全50ブランド最新データも掲載。読むだけでクルーズの基礎知識から小ネタまで身につく一冊です。

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