前回は、高齢者を「1億総活躍」の一員とする地域医療の取り組みを紹介しました。今回は、地域包括ケアシステムが提供する「高齢者介護・医療サービス」を見ていきます。

定期的な「訪問診療」、緊急時の「往診」

高齢者が「その人らしく」地域のなかで生活するにあたって、もっとも望むことは自宅で暮らし続けることです。住み慣れた家で、家族のつくる食事を食べ、掃除や料理も自分たちで行う自立した生活は、何物にもかえがたい幸福な生活スタイルではあります。最終的には看取りまで自宅で行うことが、今後の課題になっていきます。

 

そのために「地域包括ケアシステム」があり、地域医療を担う医師が存在します。では、在宅の高齢者を支える医療や介護のサービスにはどのようなものがあるのか、主たるものを解説してみましょう。

 

往診と訪問診療

▽在宅医療の要!

 

在宅医療には大きく分けて「訪問診療」と「往診」という2種類があります。この2つの医療は似ているようでいて、考え方が異なります。

 

 

訪問診療は来院困難な患者に対し、週に1回や月に2回など、日時を決めて計画的に訪問して診察するものになります。持病はあるが入院治療は断られている人や、高血圧など周期的に体調をチェックする必要のある人、投薬などが必要な人が利用する受診方法です。医師側が予定を組みやすく、無駄なく地域を回ることができます。

 

また、ターミナルケア加算や在宅がん医療総合診療料の加算が可能ですから、終末期の患者を見守る際には、意味のない投薬や治療はしないという選択をしやすい診療報酬制度になっているといえるでしょう。

 

一方、往診は、緊急時に通院の難しい患者の自宅や施設を医師が訪れ、診療を行うことを指します。訪問診療を行っている患者の緊急対応が中心です。

 

ただし、普段からかかりつけ医として診察をしていないと、カルテがないため、一旦自費診療で支払ってもらうケースも出てきます。

24時間体制で往診に対応・・・在宅療養支援診療所・病院

在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院

▽24時間地域を見守る砦

 

訪問診療を利用している患者が、約束の日時以外に往診して欲しい場合には、「在宅療養支援診療所」や「在宅療養支援病院」が24時間体制で往診に応じます。延命措置はして欲しくないが、呼吸不全が起きている患者や、腹水や胸水がたまり、自宅で介護をするには家族の負担が大きい患者にとって、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院が大きな役割を果たします。

 

これらの医療施設では、連携する保険医療機関や訪問看護ステーションに対し、適切に患者の情報を提供したり、緊急時に入院できる病床を確保していることが求められます。

 

また、5カ所以上の医療機関との提携や、在宅医療を担当する常勤の医師が3名以上いること、年に4件以上の看取りを行うといった条件が課され、歯科医師、薬剤師、理学療法士、ケアマネジャーなどとも連携している必要があります。

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