今回からは、休日や日々の睡眠時間を満足に得られない医師が、クリニック開業を実現するためにはどんな意識でどのような準備をすればよいのかを見ていきましょう。

多忙な医師が独力で開業するのは「ほぼ不可能」?

大学病院や総合病院で働く勤務医の過重労働が、近年大きな問題となっています。「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」が2009年に行ったアンケート調査では、約4000人の勤務医からの回答をもとに、以下のような報告がなされています。

 

●休日については月に4日以下が46%を占めた。        

●平均睡眠時間は6時間未満が41%を占めた。        

●自宅待機が月に8日以上の回答者が20%いた。        

●当直が月に6回以上ある回答者が10%いた。

 

このような過酷な労働状況の中で、精神面での問題を抱えている医師も少なくありません。同じアンケートでは、メンタルに関する質問への回答も次のようにまとめられています。

 

●自分自身を否定的に見る回答者が7%いた。

●1週間に数回以上、死や自殺について考える回答者が6%いた。

●エネルギーレベルの低下がみられた回答者が6%いた。

●メンタルヘルス面でのサポートが必要と考えられる回答者が9%いた。

 

勤務医がどれだけ凄絶な労働環境に置かれているかがまざまざと伝わってくるようです。また、医師ほどではないでしょうが、勤務歯科医師においても多かれ少なかれ、同様の状況にあるのではないかと推測できます。

 

このような長時間労働下で、精神的余裕もない医師、歯科医師が独力で開業することは事実上、不可能に近いといってもよいでしょう。

途中で断念してギブアップするケースも・・・

開業にあたっては、開業地の選定をはじめ、資金調達の方法やスタッフの採用に至るまで、複数の案件を着実かつ迅速に同時進行させていかなければなりません。着手した時点では、「誰の力も借りずに自己完結してみせる」と決心したものの、ルーティンワークと並行しながら自己完結することがどれほど大変であるか、すぐに気付くはずです。実際、自己完結を目指したものの、途中でギブアップして開業を断念されたドクターも少なからずいらっしゃいます。

 

このような事態に陥らないようにするためにも、やはり、開業する際には、クリニック事情に精通し、十分な知識とノウハウを備えた専門家のサポートがどうしても必要となってくるのではないでしょうか。

本連載は、2016年4月刊行の書籍『改訂版 クリニック開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 クリニック開業読本

改訂版 クリニック開業読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

2000年から2015年の医療機関の倒産件数は527件。経営破綻した医科・歯科クリニックの8割は破産を選択せざる得なく、再起も難しい状況です。このような厳しい状況の中でも集患に成功しているクリニックが存在するのはなぜでしょ…

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