今回は、社員一人ひとりの生産性を高める方法と、給料を払う際に、社長として意識すべきことなどを見ていきましょう。

生産性を上げる唯一の方法は「付加価値」を高めること

私が、「社長として押さえておくべき数字で一番大切なことは何ですか?」と聞かれたら、迷わず「社員一人当たりの生産性です」と答えます。

 

社員一人当たりの生産性とは、売り上げから商品や材料の仕入れ、外注費などの変動費を引いた粗利益を社員の人数で割った数字です。言い換えれば、外で稼いだ利益を何人の社員で上げたのか、粗利益/社員数(役員含む)です。

 

なぜ、社員一人当たりの生産性が大切かわかりますか? 会社の費用のうち、人件費が通常半分以上だからです。人件費は、一人当たりの給料×社員数だからです。社員一人当たりの生産性が低いのに、利益を出すには、社員の給料を搾取するしか方法がないからです。

 

そうすると、その会社の業種と売上高、社員数を聞くと、だいたい儲かっているかどうかがわかります。

 

[図表1]変動損益計算書

では、社員一人当たりの生産性はいくらにすべきでしょうか? 中小企業の場合、年1000万円欲しい。上場企業の一人当たり生産性は、製造業でだいたい年1800万、製造業以外で1200万です。中小企業の平均は、現在770万ぐらいです。

 

市場が拡大基調にある経済での生産性は、オペレーション力、つまり効率が生産性を高める有効な方法でした。しかし、市場が縮小基調にある現在の経済下では、生産性を高める唯一の方法は、絶対に付加価値です。

 

サービス業なら物販的な要素を取り入れ、物販ならサービス的な要素を付加して、顧客に許していただける最高の値決めによって、粗利益を飛躍的に伸ばすことが生産性を高める唯一の方法です。

 

業種業態にもよりますが、正社員で事業を行う場合、社員一人当たり年700万以下になったら、どこをどういじろうと会社に利益を出すことは不可能でしょう。人員構成を待ったなしで考えなければならない緊急事態です。ここにウルトラCはありません。

 

あなたの会社の一人当たり生産性はいくらですか? 相変わらず社員の尻を叩いて効率を追求するか、社員一人当たりの稼ぎ1000万を明確に意識して、付加価値を高める仕事を創造するかは、社長次第です。社員一人当たりの生産性に、儲けの秘密があります。

給料は人に払うものではなく、仕事に払うもの

給料とは、世の中に役に立つ仕事によって稼いだ粗利益から払われるわけですが、会社にしっかり利益を残したいと考えれば、給料は「人」に対して払われるものではなく、「仕事」に対して払われるものと考えなければいけません。

 

社員の勤続年数や勤務時間、個々の能力を軸とした給料は人に対して払う給料です。これに対して、お客さまへのお役立ち度や仕事の難易度、質の高い仕事に対して払われる給料が仕事に対して払う給料です。

 

トップである社長は、質の高い仕事を軸にして、仕事(成果)に対して給料を払うという思想をこれからは特に持っておかなければ、厳しい時代を生き抜くことはできないように思います。

 

業種業態や企業規模にもよりますが、中小企業の場合、だいたい仕事をして稼いだ成果のうち4〜5割が社員の給料、経営者層の給料が1割、結果として仕事の成果に対する分配率50%を一つの目安に、自社の都合を加味していけばいいと思います。

 

昔から自分の給料の2.5倍働け、などといわれていますが、2.5倍働くと分配率は4割になるわけです(1÷2.5=4割)。

 

[図表2]変動損益計算書

それから、人と仕事の関係からいえば、「人に仕事がついている」わけではなく、「仕事に人がついている」という思想を持っておく必要があるでしょう。社内で「それは私の仕事ではありません」などという会話がされるのは、「仕事に人がついている」という感覚を社員全員が共有していないからです。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『低成長時代に業績を伸ばす社長の条件 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

関根 威

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、日本経済は長期的な低迷を続けています。いまや日本企業の75%が法人税を払っていないのが現状です。このような低成長時代には、経営者は何を心がければいいのでしょうか――。 本書では、外部コンサルタント…

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