前回に引き続き、離婚の際に重要となる「分与対象財産確定」のプロセスを見ていきましょう。今回は、原資の区別等について説明します。※本連載は、弁護士として活躍する森公任氏、森元みのり氏による編著、『2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与額算定・処理事例集』(新日本法規出版)の中から一部を抜粋し、財産分与の概要と、分与対象財産の確定方法を説明します。

婚姻前からの保有財産、婚姻中に取得した財産を分ける

前回の続きである。

 

3 原資の区別

 

基準時に存在する財産を列挙した後、特有財産の混入を主張する側から特有財産である事実及び範囲の立証をする。代表的には以下のような類型及び資料が考えられる。なお、特有財産と共有財産が混在している場合の具体的な計算方法については第3章で扱う(本書籍を参照)。

 

●婚姻前から保有していた財産

不動産:登記事項証明書

預貯金:婚姻時の通帳又は取引明細

保険:婚姻時の解約返戻金試算証明書

退職金:婚姻時の退職金試算証明書

 

●婚姻中に相続や贈与により取得した財産

全般:遺産分割協議書、贈与契約書、税申告書等

不動産:登記事項証明書

預貯金:入金のある箇所の通帳又は取引明細、その原資の通帳又は取引明細

 

特有財産が婚姻中に他の財産に形を変えた場合には、その履歴も辿ることができるよう、資料を揃えることが必要となる。特有財産である預金が共有財産である預金と渾然一体となって管理されている場合にも、履歴を辿って説明する必要がある。

 

仮に、ある財産が夫婦一方の特有であると認められるとしても、その維持管理に他方配偶者が貢献してきた場合において、公平性の観点から財産分与の対象となることもある。

借入れの原因が夫婦共同生活と無関係な場合は・・・

また、債務に関しても、原則として婚姻期間中に借り入れた債務は夫婦の共同生活のために借り入れたものとして基準時の金額を計上し、積極財産から差し引くという方法で財産分与の対象とする。

 

しかし、借入れの原因が明らかに夫婦共同生活と無関係である場合には、固有の債務であるとして財産分与において考慮しないこともある。

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