今回は、明確な理由がある「税引前利益が赤字」は銀行交渉の問題にならないという事実を、エピソードを交えて紹介します。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

土地の売却で除却損が出た年は、格付けが低下したが…

自社の格付け(スコアリング)ランクを銀行に聞きなさい!
と、書かせていただきました。
それを受けて、
「わが社の過去5年分のランクを、全部の取引銀行に聞いてみました!」
という、すごい会社がありました。
その内容をお聞きしていると、
改めて、銀行の実態が、見えてきたのです。

 

今回、その会社では、
過去5年分の格付け(スコアリング)を複数の銀行に確認しました。
するといずれも、ある年度だけ、ランクがひとつ下がっていたのです。
それは、土地を売却して、大きな除却損を出した年度でした。
決算書では、固定資産売却損として、特別損失で計上しています。
営業利益と経常利益は黒字です。
税引前利益は、大きな赤字です。
但し、除却損を計上した分、自己資本比率は若干低下しました。

 

「営業利益が黒字なら、格付けに影響ないのでは?
 やはり税引前利益が赤字だとダメなんじゃないか?」
と思う方がおられると思います。
ある銀行の担当者が、こう語っています。
「貸借対照表の資産に大きな変動があると、
 ランクがひとつ、下がります。」
つまり、土地、売掛金、在庫など、
大幅に増えた、減った、ということがあると、
ランクがひとつ下がる、とのことです。
要は、
税引前利益が赤字だからランクが下がったのではなく、
総資産に大きな変動があったから下がった、というわけです。
システムの処理として、そうなるようです。

翌年度には、各銀行が「格付け」を元に戻している

この会社の場合、
土地売却で、総資産が大きく縮んでいました。
で、さらに翌年度はどうかというと、
各銀行とも、元の格付けランクに戻っているのです。
大きく縮んだ総資産で、
営業利益も経常利益も前年同様の黒字です。
繰越欠損で法人税が発生しない分、
剰余金も増えて、自己資本比率は元に戻りました。

 

加えて、
格付けランクは一時的に下がったものの、
各銀行の支店レベルでは、
土地のオフバランスによるものであることを承知しています。
むしろキャッシュフローは向上しています。
なので、ランクが一時的に下がっても、
金利の見直しや、早期回収への働きかけなど、
まったくありませんでした。
ただ格付けランクが一時的に下がっただけ、だったのです。

 

税引前利益で大きな赤字を出しても、
理由が明確であれば、銀行交渉には何ら問題ない、
ということを、改めてご理解いただきたいのです。

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    本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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